月別アーカイブ: 2010年1月

『「新」学校百景:フリースクール探訪記』

増田ユリヤ『「新」学校百景:フリースクール探訪記』を読む。
先日六本木ヒルズで学校説明会をやってしまうような進学重視の学校の本を読んだので、それとは真逆なフリースクールの様子が知りたいと思い手に取ってみた。

一般にフリースクールというと、ガチガチの進学校に比べ、規則も緩く、だらだらした雰囲気の学校というイメージが付きまとう。しかし、有機農業を真剣に学ぶ学校や、ポニーと暮らしながら生き物を育てることの厳しさを学ぶ学校、少人数で寮生活することで逆に濃密な人間関係に揉まれる学校など、一般の学校よりも厳しい学校が全国にはたくさんある。また、そうした学校は行政からの補助もないため、その信ずるべき教育理念を守るため、ギリギリの運営を強いられている。運営するスタッフの熱い思いが印象に残った。

しかし、読み進めながら、都心の進学校であろうと、田舎のフリースクールであろうと、子どもとじっくり付き合い、様々な勉強や行事を通じて子どもの内発的動機を刺激し、子ども自らが自己の将来像を描きだすことを応援するという教育の根幹は変わらない。むしろ公立学校と比べて、エリートが集まる進学校と不登校児が中心のフリースクールの方が共通点が多いかもしれない。

著者自身も既存の公教育そのものを否定するフリースクールには批判的であり、公立学校とフリースクールが補完的な関係として共存していく方向性を示唆している。

学校という枠の中で、傷ついた子どもたちが、フリースクール・フリースペースとよばれる”居場所”で羽を休める。しかし、休んでばかりもいられない。ひとりで生きていく力を養うには、”快””楽”なことばかりではない。”難””辛””苦””耐”……こうしたことにも打ち勝つ力が必要なのである。そのために何をしていくべきなのか。一時的な現象としてではなく、長い目でみて、”不登校”という状況がもたらす様々な問題を真剣に考える時期にきているのである。

「オタクと町が萌えた夏」

先日録画した「NONFIX」というドキュメンタリー番組を観た。「オタクと町が萌えた夏」と題した内容で、『らき☆すた』という漫画で一躍有名になった 埼玉県鷲宮町に集うオタクたちの一夏が描かれる。
私は漫画を読んだことがないのだが、『らき☆すた』で描かれた場所を巡る「聖地巡礼」や、車やバイクにキャラクターの絵を描く「イタシャ(痛車)」や「イタンシャ(痛単車)」なるものまであり、周辺の商店街では様々なグッズが売られているそうだ。そうしたオタクの若者たちが、『らき☆すた』という漫画を通じて友人と出会い、居酒屋でコミュニケーションを学び、そして「らき☆すた」神輿を担ぐまでに積極的・社交的になっていく姿が印象的であった。それはダサイ「オタク」からカッコイイ「オトナ」になるのではなく、カッコイイ「オタク」になることであった。

『三毛猫ホームズの戦争と平和』

赤川次郎『三毛猫ホームズの戦争と平和』(カッパノベルス 2002)を実家のソファーに寝転がってで読む。
10分ほどで読み切る短編が表題作含め6編収められている。名探偵のホームズの出番もあまりなく、話しの 展開も似たり寄ったりで、どの作品もあまり興味を感じなかった。

『広尾学園の挑戦!』

大橋清貫『広尾学園の挑戦!:入学満足度100% 卒業満足度200%』(プレジデント社 2007)を読む。
埼玉で進学塾を経営していた著者が、広尾の一等地にあった順心女子学園の理事長に就任し、広尾学園と改称して男女共学化、特進コースの設置など矢継ぎ早に改革を進め、学園改革に乗り出すまでのドラマと、これからの社会にあるべき私学教育の理念を語る。
著者は「先生のレベル以上に生徒のレベルが上がることはない」との塾経営の経験を生かして、先生対象のテストや六本木ヒルズでの学校説明会など、教員のビジネスマインドの育成と、授業のスキルアップ教育にまず改革の矛先を向けた。

外部の予備校講師による授業検証など様々な試みを導入し、その結果二人の教員が辞めたそうだが、教員の間に「生徒のための授業づくり」の気運が芽生え始めた。そして個々の生徒の学力に応じた朝一テストと、その結果に連動して放課後の個別の課題が作成される「P.L.T.」と呼ばれるシステムが導入され、劇的に進路実績も向上している。

著者は私学が生き残るための戦略とそれを活かすノウハウを熟知しており、参考になるところも多かった。来年度から公立高校の授業料が無償化されるが、私学は公立高校との差別化、そして進学実績だけでない公立にはない魅力を高めていかねばならない。一方で公立高校の側は徒に差別化を目指すのではなく、当たり前のことをしっかりできる普通教育を確立せねばならない。

さあ、切り替えの時期。

ここ半月ほど、一週間にわたる娘の入院に続き、度を超えた仕事の多忙のため更新が滞っていた。これから2ヶ月ほどは数年ぶりにゆっくり休むことができるので、家族との時間を大切にし、本を読み、映画を観て、運動を継続し、心身ともに充電の期間としたい。