『広尾学園の挑戦!』

大橋清貫『広尾学園の挑戦!:入学満足度100% 卒業満足度200%』(プレジデント社 2007)を読む。
埼玉で進学塾を経営していた著者が、広尾の一等地にあった順心女子学園の理事長に就任し、広尾学園と改称して男女共学化、特進コースの設置など矢継ぎ早に改革を進め、学園改革に乗り出すまでのドラマと、これからの社会にあるべき私学教育の理念を語る。
著者は「先生のレベル以上に生徒のレベルが上がることはない」との塾経営の経験を生かして、先生対象のテストや六本木ヒルズでの学校説明会など、教員のビジネスマインドの育成と、授業のスキルアップ教育にまず改革の矛先を向けた。

外部の予備校講師による授業検証など様々な試みを導入し、その結果二人の教員が辞めたそうだが、教員の間に「生徒のための授業づくり」の気運が芽生え始めた。そして個々の生徒の学力に応じた朝一テストと、その結果に連動して放課後の個別の課題が作成される「P.L.T.」と呼ばれるシステムが導入され、劇的に進路実績も向上している。

著者は私学が生き残るための戦略とそれを活かすノウハウを熟知しており、参考になるところも多かった。来年度から公立高校の授業料が無償化されるが、私学は公立高校との差別化、そして進学実績だけでない公立にはない魅力を高めていかねばならない。一方で公立高校の側は徒に差別化を目指すのではなく、当たり前のことをしっかりできる普通教育を確立せねばならない。

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