第2回大江健三郎賞受賞作、岡田利規『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(新潮社 2007)を読む。
雑誌「新潮」に掲載され、第49回岸田國士戯曲賞を受賞した「三月の5日間」と初めてのオリジナル小説「私の場所の複数」の2作が収められている。両作品とも純文学的な内容で、話者の視点がパチパチと入れ替わっていく。村上龍の『限りなく〜』に似たようなテイストの作品である。
「三月の〜」の方は、イラク戦争が開始されるその前夜に、渋谷のラブホテルに泊まり込み、ひたすらセックスとお喋りに耽る若者を描く。密室のラブホテルで携帯の電源を切り、テレビも付けずに4、5日過ごすと、現実感がいとも簡単に無くなってしまう。途中ホテルを一歩外に出ると、イラク戦争反対の街頭デモが繰り広げられているのだが、二人は現実から切り離されたホテルへとまた帰っていく。海の向こうで始まったイラク戦争からいとも簡単に縁を切ることの出来る日本人の疎遠な感覚が浮かび上がってくる。
「私の場所〜」はつまらなくて途中で読むのを止めた。
『わたしたちに許された特別な時間の終わり』
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