河野美香『十七歳の性』(講談社+α新書 2000)を読む。
いささか刺激的なタイトルであるが、十代の中絶や性感染症の危険性を実例交えて紹介し、また薬物やタバコ・アルコールなどが胎児に及ぼす危険性、またインターネットなどに氾濫する性情報の問題性を分かりやすく解説した真面目な本である。
著者は単に十代のセックスを頭ごなしに否定はしない。セックスそのものを「愛し合う男女の間で、お互いの気持ちが高まり、自然と体が触れ合い、体が結びつくもの」と述べ、「心がともなっているからこそセックスをしたときには精神的な満足感や充足感を味わうことができる」と、お互いの信頼関係と責任を前提にしたセックスを肯定している。
学校の保健や家庭科の教科書的な内容ではあるが、学校の教室で教員が話す内容としてはいささか「範囲」を逸脱しているか?
月別アーカイブ: 2007年7月
『二十歳の原点序章』
高野悦子『二十歳の原点序章』(新潮文庫 1979)を読む。
勤務先の学校の推薦図書に載せる関係で読んだ。この続編にあたる『二十歳の原点』の方は何度か読み返したが、『序章』の方は初めてだった。
この『序章』は、宇都宮女子高校の3年次から大学受験を経て立命館大学文学部の2年生までの著者の秘密の日記である。大学に入学して大学の自治会活動や部落研究会に属し、抑圧された社会の現実に触れる中で、高野さんは自身の弱い性格を自覚するようになった。恋愛や様々な諸活動、勉学に今一歩積極的になれない自分を高野さんはどんどん追いつめて行く。部屋を片付けない自分、勉強をサボる自分、不規則な生活をくり返す自分に対する嫌悪感が綴られる。世間知らずの女子大学生の過剰な自意識だと片付けてしまえばそれまでだが、私自身が大学生活時に感じていた焦燥感と重なるところもあり味わいながら読むことができた。
自分を忙がしくして自分を流させ過ぎる。そして後に残るものはわずかな満足感だけである。未来に残るものはあのときはよかったという満足感だけである。またこのようなことをくり返したくない。自分の生きる方向性をもちたい。そのために何かをやるのだ。何がやりたいのか、何をがまんしなければな らないのか。
『正義の判決:行列のできる弁護士』
丸山和也『正義の判決:行列のできる弁護士』(小学館 2002)を読む。
今回の参議院に自民党の比例代表として出馬する人気タレント弁護士の丸山氏の著書である。一体彼はどのような人物であるのか興味があって手に取ってみた。一夫一婦制の「正常」な結婚制度に対して疑義を挟んでみたり、何でもアメリカの言いなりになる日本に対する不信、そして、被害者意識を慮った死刑制度の存続を訴える。根回し米国追従の自民党というよりも、民主党小沢代表寄りな見解が目立つ。人情派弁護士というキャッチフレーズからは程遠い、タカ派的な見地に立った意見が多かった。
エンゼルドームにて
『ハリーポッターと賢者の石』
J・K・ローリング『ハリーポッターと賢者の石』(静山社 1999)を読む。
この年になって、またこの歳になってやっと『ハリーポッター』を読んだ。貧しい肩身の狭い生活から、一躍有名な魔法学校への入学切符を手に入れる「シンデレラ」ストーリー、魔法学校での生活は、見るもの聞くもの全てが奇妙で興奮に満ちた「不思議のアリス」的世界、そして魔法を覚え日々成長しながら、闇の世界の悪魔を倒す「ドラゴンクエスト」的な展開、などなど子どもの気持ちを鷲掴みにする要因が満載である。「元」少年である私も、テンポ良い訳文のお蔭か、すいすい読むことができて楽しめた。