高野悦子『二十歳の原点序章』(新潮文庫 1979)を読む。
勤務先の学校の推薦図書に載せる関係で読んだ。この続編にあたる『二十歳の原点』の方は何度か読み返したが、『序章』の方は初めてだった。
この『序章』は、宇都宮女子高校の3年次から大学受験を経て立命館大学文学部の2年生までの著者の秘密の日記である。大学に入学して大学の自治会活動や部落研究会に属し、抑圧された社会の現実に触れる中で、高野さんは自身の弱い性格を自覚するようになった。恋愛や様々な諸活動、勉学に今一歩積極的になれない自分を高野さんはどんどん追いつめて行く。部屋を片付けない自分、勉強をサボる自分、不規則な生活をくり返す自分に対する嫌悪感が綴られる。世間知らずの女子大学生の過剰な自意識だと片付けてしまえばそれまでだが、私自身が大学生活時に感じていた焦燥感と重なるところもあり味わいながら読むことができた。
自分を忙がしくして自分を流させ過ぎる。そして後に残るものはわずかな満足感だけである。未来に残るものはあのときはよかったという満足感だけである。またこのようなことをくり返したくない。自分の生きる方向性をもちたい。そのために何かをやるのだ。何がやりたいのか、何をがまんしなければな らないのか。