矢幡洋『アイドル政治家症候群:慎太郎、真紀子、康夫、純一郎に惹かれる心理』(中公新書ラクレ 2003)を読む。
テオドア・ミロンの人格障害理論に依拠し、日本で人気を集める政治家の心理と、その人気の仕組みの分析を試みる。日本人は、共同体内部においては気配り上手で、万事にきちんとし、忍耐力のある苦労人という調整的で同調的なパーソナリティを持った人間を理想としてきた。しかし、抑うつ的な雰囲気が社会全体を覆うにつれて、共同体の外の集団に対しては独断的で破壊的な強烈な自分意識を持った人間を希求するようになる。そうした時代の雰囲気に小泉総理や、田中真紀子議員、石原、田中知事がうまく乗っかったと著者は評する。著者の分析は政治評論の立場ではなく、あくまで人格分析に基づくので、発想が新鮮である。例えば石原都知事については、権力の中枢を浮遊しながら、あくまで彼の行動判断の基準に「反社会性」が貫かれていると述べる。一方で、鈴木宗男議員は熱血漢を売りにしながらも、あくまで自説の論理の整合性で持って相手をねじ伏せようとする攻撃性を有すると著者は結論付ける。本人に対する取材はなく、本人のマスコミでの発言や著書からの分析であり、牽強付会な箇所も多いが暇つぶしには良いだろう。
『アイドル政治家症候群』
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