森毅『思い出つくれる学校のすすめ』(明治図書 1990)を読む。
「算数教育」という教員向けの雑誌に連載された著者の教育を巡るエッセーをまとめたものである。「授業のプロ」「道徳者」「上に立つ者」という固定化された「教師」観念を崩すことから、教育に柔軟性が生まれて自由な教育環境が実現できる素地が生まれるのではないかと、森氏はのらりくらりとした語り口で述べる。氏はゼロサムに物事を固定化する傾向にある教員や校長、さらには教育行政全般の在り方に批判的な見解を示し、あらゆる物事には100%というものは存在せず、適度な異分子が混じっている方が自然であり、そうした多様性を守っていくことこそが教育の原点であると述べる。一方で、森氏はいたずらに管理や校則のない自由教育を目指せと言うのではない。一定程度の規則やルールを作った上で、ぎりぎりルールに踏みとどまったり、逆にルールを思い切って越えていく、そうしたライン際における判断力や行動力が生き馬の目を抜く社会で役立つと述べる。つまり、土俵際の粘り強さこそが真の「生きる力」だというのだ。
確かに、私自身自分や相手をうまく騙したり騙されたり、また賛成しながら反対するといった微妙な対他関係を苦手としているので、いろいろ参考になるところが多かった。
『思い出つくれる学校のすすめ』
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