奈良本英佑『君はパレスチナを知っているか』(ほるぷ出版 1991)を読む。
古い本であるが、シオニズム運動を援護する「バルフォア宣言」、アラブの独立を認める「サイクス・ピコ協定」、そしてフランスとの分割統治を取り決めた「フサイン・マクマホン書簡」などの一連のイギリスの二枚舌、三枚舌外交によって生まれた中東問題について詳しく書かれている。
著者は徹底してイスラエル政府を批判的に捉え、パレスチナ自治政府の正当な存在権利を主張する。日本のマスコミでは、右派政府による強硬策を打ち出すイスラエルとゲリラ戦を繰り返すPLOという分かり易い図式で報道されるが、実際はもう少し複雑なようである。衝突を繰り返すイスラエルとパレスチナの間で、離散を強いられてきたイスラエル市民のための故郷、そして今隔離を強いられているパレスチナ難民の共存共栄を目指す市民グループがイスラエル国内にもアラブ各国にも数多く存在するのだ。特に、イスラエル政府の拡大路線を批判し、大規模なデモ活動を策動する「ピース・ナウ」等のイスラエル市民グループの存在は影響力こそ限られるが、その存在意義は大きい。
今月よりイスラエルのシャロン首相とアッバス・パレスチナ自治政府議長との会談が4年半ぶりに再開される。しかし、そうした首脳会談を突き動かし、それに大きな期待を寄せる市民の存在を新聞の行間から感じ取らねばならない。