日別アーカイブ: 2003年12月26日

『蟲』

坂東眞砂子『蟲』(角川ホラー文庫1994)を読む。
古代の神の化身である虫が人間の体を巣食い、人間の心を餌に体内で蛹になって成長していくという、『パラサイトイブ』に類似した設定のホラーである。夫と妊婦のぎくしゃくした関係の中にすっぽりと古代の「常世虫」が入り込むのだが、やがて夫婦関係をお互いに「無視」する間柄ねじ曲げ、そして人間は心を食べられてしまうことにより、「無私」な境地に入っていく。その間の夫婦同士の会話や心情を丁寧に描いており、単なるホラー作品には終わっていない。