亀井勝一郎『青春論』(角川文庫 1962)を読む。
1956年の週刊読売の「若い河」という欄に連載されたコラムとその前後に書かれた短文がまとめられている。亀井氏は戦前は中野重治と同じプロレタリア作家同盟の出身であるが、「転向」後は「日本浪漫派」の一員として、日本古来の寺社や伝統に回帰して、中野とは別の方向を歩んでいくことになった。しかしあるべき理想社会が共産主義国家なのかそれとも別の方向なのかという違いこそあれ、現実社会の耐えざる変革が必要であり、そうした変革のエネルギーは若人に宿っているという考え方は同じである。憲法改「正」の問題についても米国追従型のなし崩し的な軍備拡大が青年の徴兵制度につながるという点から明確な反対を述べている。そしてつぎのような言葉で締めくくる。
近いうちにありうるかもしれぬ憲法改正は、日本の理想と日本の倫理のために危険である。「現実的」という言葉をよく使うが「現実的」という名目で「現実」の奴隷になってはならない。