岩見隆夫『あのころのこと ー女性たちが語る戦後政治ー』(毎日新聞社 1993)を読む。
歴代の戦後政治の要職に就いた議員の妻の視点から戦後政治を振り返るという内容だ。三木武夫夫人の三木睦子や、園田直外相夫人の園田天光光、江田三郎社会党書記長夫人の江田光子、池田勇人夫人の池田満枝らが夫の私的な交友関係を中心に政治の裏側を語る。
特に戦後初の女性議員となった「餓死防衛同盟」代表の園田天光光さんの話が興味深かった。敗戦の年の末に餓死防衛同盟のメンバーで国会に向けて行進をしたところ、そのまま幣原総理と会見が実現したというのだ。戦後の憲法が発布される以前は、まだ国会への直接請求が可能であったのだ。何か皮肉な話である。
また「貧乏人は麦を食え」で有名な池田勇人氏が、戦時中は家族を春日部に疎開させており、土日に「今晩はゆっくり寝られるね」と言いながら春日部にやってきて、近所の税務署の人から白い銀飯をもらっていたそうだ。春日部周辺は米所でコシヒカリの作付けが多い。彼の発言ー本来の趣旨とは異なって伝えられているがーの底意に春日部での経験があったのではと邪推してしまった。