山根一眞『デジタル産業革命 「情品経済」の仕事力』(講談社現代新書)を読む。
ちょっと古い本なので、ADSLが普及した今現在読む価値はあまりない。しかし後半部分の強引な社会分析には文章に勢いがあった。この強引さには嫌悪感を通り越して感動さえある。
「ローン係数」が高い家庭とは、大都市内に先祖伝来の土地を持たぬ地方出身者が築く家庭が中心だ。その家庭では、住宅ローンの支払いのために夫婦共稼ぎが必須となる。都市における女性の社会進出は、こうして拡大していった面もあろう。かつて社会から隔離された家庭に閉じこめられていた女性たちは、その社会進出によって自らの社会的役割を意識するようになっていった。統帥権を失ったオヤジと働きに出る母。郊外のこぎれいなベッドタウンの住宅地の家庭は空洞化が進み、そこに育つ子供たちは家族がいない家に放置され、淋しさを味わう日々を過ごすようになる。子供の成長にとって親は最初にぶつかる社会だといわれてきた。社会のルールも理不尽さも、うるさい親とぶつかることで社会人として欠かせぬ心の平衡を身につけていく。だが、ぶつかるべき親のいない家庭に育った子供たちは、そのぶつかり先を友人間に向けた。その衝突には、親が持つような抑制機能がないため歯止めがきかなくなり、校内暴力やいじめへと発展していった。また、その空虚な家庭をもたらしたものが、住宅ローンという経済的圧迫であることを幼い頃から学んだ子供たちは、カネに対する執念を強くもつようになった。手軽に小遣いを稼げる方法として、援助交際や風俗でのアルバイトに向かう者が続いたのも不思議ではない。