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『プロの写真はここが違う!』

橋本僐元(よしはる)『プロの写真はここが違う!』(日本実業出版社 1995)を読む。
著者の橋本氏は、アマゾン河を源流からゴムボートで下ったり、南米を四駆で縦断したり、オーストラリアを一人で一周したりして、写真を撮り続けたプロカメラマンである。そのの著者が、カメラの基礎知識に始まり、一眼レフの使い方や撮影テクニック、果ては空撮やスポンサーの意図を組んだ撮影についてまで分かりやすく論じている。入門者向けの解説書というよりは、プロを目指す大学生や専門学校生向けの心構えのような内容である。海外ロケに簡単にスポンサーがつくといった辺りはバブルならではの雰囲気を感じたが、技術よりも感性で勝負していくカメラマンの厳しさが印象的であった。

あとがきの中で、筆者はプロのカメラマンになるために実行すべき5点を挙げている。カメラマンだけでなく、全ての表現者やプロを目指す挑戦者に通じるものだったので引用してみたい。

  1. 他人の真似をせず、独創的な発想をすること
  2. 自分の信念を守り、途中であきらめないこと
  3. 作品に対するイメージを強く抱くこと
  4. 自分の得意なジャンルで努力すること
  5. 売り方について、研究を怠らないこと

『在原業平殺人事件』

山村美紗・西村京太郎『在原業平殺人事件』(中央公論社 1997)を読む。
雑誌「中央公論」に連載途中で亡くなった山村美紗さんの未完の作品を、生前の約束通り盟友の西村京太郎氏が完結させた異色の作品である。京都を舞台に『伊勢物語』の古文書が発見されたことで連続殺人事件が展開されていく。事件の展開自体はあまり興味をひくようなものではなかったが、在原業平や伊勢物語についての蘊蓄に詳しくなった。

『十津川村 天誅殺人事件』

西村京太郎『十津川村 天誅殺人事件』(小学館 2006)を読む。
奈良県十津川村を舞台にした殺人事件に切り込んでいく十津川警部のミステリーである。
「文芸ポスト」に1年半に渡って連載されていた作品なので、歴史的背景の同じ内容の説明が繰り返されるのは少々閉口した。しかし、1冊読んだだけで、奈良県十津川村の歴史や観光地、東京からの位置関係などがすっかり把握できてしまった。まさに、犯人を追いながら、一緒に旅気分を味わうという「旅情ミステリー」の醍醐味であろう。

『伊勢・鳥羽殺人事件』

大谷羊太郎『伊勢・鳥羽殺人事件』(双葉社 2001)を読む。
ご存知(?)八木沢警部補が活躍する旅情ミステリーである。
巧妙な伏線が張られ、最後にドンデン返しで全ての謎が解け、読者を飽きさせない作品であった。
ただ、伊勢や鳥羽は単なる殺人現場として用いられただけであって、「伊勢・鳥羽」というタイトルそのものには疑問を禁じ得なかった。

『東名高速殺人事件』

山浦弘靖『東名高速殺人事件:特捜ハイウェイ刑事』(光文社文庫 1992)を読む。
1988年のバブル真っ盛りに刊行された本である。出版界も好景気だったのだろう。空中に浮いてしまうようなブースターやオフロードも走れるようにタイヤから爪が出るような改造を施した愛車BMWに乗るハイウェイ刑事が、細菌兵器を密かに密造するグループを追うという内容である。途中10代の少女との危ういシーンがあったり、内閣情報調査室のエリート役人が銃を放ったり、いい感じにぶっ飛んでいて飽きることはなかった。通勤途中のサラリーマンが駅のキオスクなどで手に取って、仕事の疲れを癒すような肩の凝らない物語である。
著者には申し訳ないが、こんな暇つぶしだけの本が堂々とシリーズで出版される時代があったことに驚きを感じてしまう。こうした通勤途中の大人向けの娯楽小説が売れる時代はもう来ないのだろうか。