安能務『韓非子:上』(文春文庫 2000)を数ページだけ読む。
今年も『矛盾』を授業で扱うので、教材研究の一環として手に取ってみたが、あまりの難しさというか、読みにくさにほんの10分ほどページを繰ってギブアップ。漢文学や古代中国史を専門とする大学生や教員向けに書かれたのであろうが、一般論や慣例的な解釈を批判するという形を取っているので、『韓非子』をある程度読みこなしていないと字面を追うことさえ難しい。
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『神の子どもたちはみな踊る』
村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』(新潮社 2000)を読む。
阪神大震災に纏わる連作の短編小説集である。表題作の他、雑誌「新潮」に連載された『UFOが釧路に降りる』『アイロンのある風景』『タイランド』『かえるくん、東京を救う』の4編に、書き下ろしの『蜂蜜パイ』を加えた計6編の小説が掲載されている。
どの作品も「純文学」風で、一見とりとめもない話ばかりなのだが、話の場面場面の印象が強い話が多かった。特に、『神の子ども〜』で、2月の真夜中に東京の外れの野球場で突然踊りだす青年の話なのだが、神話を読んでいるような不思議な雰囲気の作品であった。また、『蜂蜜パイ』であるが、作家稼業には付いて回るのか、何とも言えない漠然とした不安が地震に絡めてうまく描かれていた。
『文房具を楽しく使う』
和田哲哉『文房具を楽しく使う:ノート・手帳篇』(早川書房 2004)を読む。
十年前の本になるが、当時筆者が気に入っていた「ロディア」のメモ帳や、「モールスキン」のノート、「クォバディス」の手帳など、一般ユーザーの目線から、その特徴や美しさについて解説を加えている。しかし、一流品ばかりの紹介だけでなく、無印良品のリングノートや現在では下火となったバインダー手帳についてもしっかりと目を向けている。
確かに、100円ショップにも多種多様の文房具が並んでいるが、安物だと長く使い続けるうちに、メモを小まめに取ろうとかノートをまとめようとかいう気持ちそのものが冷めてしまう。文房具は自分自身の向上心と結びついているので、自分が納得して少々値段の張る物を使い続けていきたい。
□ 和田哲哉 – LowPowerStation –
『コーヒーが廻り世界史が廻る』
臼井隆一郎『コーヒーが廻り世界史が廻る:近代市民社会の黒い血液』(中公新書 1992)を読む。
大航海時代以降、香辛料やお茶、阿片の交易を巡って世界の国々が結びついていく歴史は教科書にも載っているが、コーヒーの流通や普及から、重商主義の拡大から帝国主義までを俯瞰するという、一風変わった内容の本である。歴史の勉強の一環として手に取ってみた。
イエメン発祥とも言われるコーヒーが、メッカやエジプト・カイロを経由したイスラム教徒の隊商貿易で広くヨーロッパに流通していく過程や、フランス中南米のハイチに、ドイツが東アフリカのタンザニアにそれぞれコーヒーのプランテーションを作っていく流れ、フランス革命の情報の拠点にコーヒーハウスが使われたといった、受験生時代に参考書や問題集でやらなかったような史実が次々と紹介される。
高校の教科書が華やかな政治や経済、戦争、事件を中心としたメインストリートであるのに対して、およそ農地に適さないような高地や路地裏の喫茶店での演説など、歴史街道の裏道を辿るようで興味深かった。


