下田翔太原作、高橋慶執筆、toi8イラスト『消滅都市』(PHP研究所 2015)を読む。
スマートフォン用に配信されているゲームアプリの世界のノベライズである。登場人物について読者が分かっている前提で話が展開していくので、展開の省略が多すぎて、物語の世界観そのものが理解できなかった。
「読書」カテゴリーアーカイブ
『アンドロギュノス』
安賽泰史『アンドロギュノス』(幻冬舎メディアコンサルティング 2016)を読む。
幻冬舎サイドに編集者が介在した自費出版という形なのか。
タイトルにもある通り、処女懐胎したマリアを両性具有者として捉え、現代において両性具有者が出産をするというモチーフで話が展開していく。新奇なモチーフに囚われすぎたのか、後半は筆の勢いに任せるのみで、前半と話が噛み合っていない箇所が幾つもあり、読者が置いてけぼりにされる。
宣伝文句に騙された感が残る。
『火山のはなし』
下鶴大輔『火山のはなし:災害軽減に向けて』(朝倉書店 2000)を読む。
東京大学の地震研究所教授や気象庁の火山噴火予知連絡会の会長職を歴任した著者が、学生や自治体の防災担当者向けに分かりやすく、火山の仕組みと過去の火山噴火の状況、火山噴火の防災の実践などについて語る。
長年火山に魅せられてきた著者だけに、火山災害以上に火山の魅力が行間から感じられる。著者は次のようなセリフで火山の素晴らしさを伝える。
The most spectacular and dynamic
phenomena of Nature are
Aurora in the Heaven
and
Volcanic Eruptions on the Planet Earth
『竹人形殺人事件』
内田康夫『竹人形殺人事件』(角川文庫 1997)を読む。
1992年に刊行された本の文庫化である。バブル真っ只中で開発の波が押し寄せる福井県を舞台に、水上勉が小説で描いた「越前竹人形」の伝統と、観光客を呼び寄せるための開発に伴う汚職が複雑に絡み合う。
作者のミステリー量産期に書かれた作品で、事件のカラクリの「フォーマット」に地名とモチーフを抛り込んだだけの、荒削りな内容となっている。
冬休みの気分転換にちょうど良い作品であった。
『樹木ハカセになろう』
石井誠治『樹木ハカセになろう』(岩波ジュニア新書 2011)を読む。
樹木医や森林インストラクターを務める著者が、日本人に馴染み深いイチョウやケヤキ、スギなどの生態や生育環境について分かりやすく説明されている。光合成や道管・師管など生物の勉強の簡単な復習ができた。
「光合成」をおこなっている器官が、このクロロフィルがたくさんつめこまれた葉緑体です。クロロフィルは光を吸収すると、そのエネルギーを使って水を分解し、酸素をつくります。また、吸収したエネルギーを別の物質に与え、こんどは葉が気孔から吸収した二酸化炭素を使って、ブドウ糖をつくります。
ブドウ糖は炭素、酸素、水素の三種類の元素でできていて、これらが植物の体にもっともたくさん含まれています。しかしそのほかにも窒素、リン、カリウム、カルシウムなど十数種類の元素が必要なのです。このうち、窒素、リン、カリウムの三つの元素は、植物が大量に必要であるにもかかわらず、土の中に少ないため、根からとりいれることがむずかしく、作物をつくるときには肥料として与える必要があり、肥料の三要素と呼ばれています。窒素は大気の80%をしめているほど、気体としては大量にあるのですが、植物はこれを直接利用することはできないのです。トクサやスギナが、直径1メートル、高さ40メートルになった姿を想像できますか。いまから3億年前の、トクサやスギナの祖先の姿です。湿地に大森林をつくっていました。幹は1メートルあっても、空洞のため、もろく崩れやすかったでしょう。倒れて折り重なり、長い年月をかけて上からの圧力を受けて変質していきます。有機物は炭素を中心にほかの原子が結合していますから、熱や圧力でほかの原子が離れてしまい、炭素のかたまりとして地層に残ったのが石炭です。








