窪塚洋介『20』(光進社 2000)をパラパラと眺める。
芸能人の窪塚洋介の二十歳を記念した写真集(ポエム集?)である。自分は周りとは違うという自意識が多分に露出された文で埋め尽くされている。著者自身に興味がなかったので、1分ほどで読み流した。
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『地図を破って行ってやれ!』
石田ゆうすけ『地図を破って行ってやれ!:自転車で、食って笑って、涙する旅』(幻冬舎文庫 2016)を読む。
2013年に刊行された本の文庫化である。著者の石田氏は学生時代に自転車で日本一周、そして大学卒業後に自転車で世界一周を果たしている、生粋の自転車旅行家である。その著者が、3、4日かけて日本のあちこちを自転車で気軽に旅するという企画である。冒険というよりも、エッセー仕立てであり、ビールと地図を片手に、ふんふんと読んだ。
印象に残った点を2ヶ所書き留めておきたい。前半は熊本県阿蘇の旅行記の一節である。私も自転車旅行ならではの「地球」を新鮮に感じる旅を重ねていきたい。後半は本書でも随所に登場する友人との再会について述べた一節である。論語の「朋有り遠方より来る、亦た楽しからずや」を思い出した。ちょうど新型コロナウイルスの外出自粛の影響で、ずっと家にいる自分にじっくりと語りかけてくるような内容だった。ツールや同行者を問わず、旅を大事にしたい。
そうしてくだんの白川水源に着くと、「こりゃたしかにすげえわ」と目を丸くした。
木立の中に澄みきった泉があった。新しい水槽のように水の中がはっきりと見える。底は砂地で、ジオラマや森のような藻が繁茂している。そこに一ヶ所、砂が舞い、藻がたえまなく揺れているところがあった。水が猛烈に湧き出しているのだ。その水は大きな清流となって、下流へ囂々と音を立てて流れている。湧き出す水の量はなんと毎分60トン。大地から水が生まれている。そのことがはっきりと目に見える。地球-この言葉を、阿蘇に来て何度頭に浮かべただろう。
-旅のおもしろさが最も極まるのは、人と再会するときじゃないだろうか……。
旅に出なければ会うはずのなかった人に会い、別れてからはそれぞれの道を歩む。そしてときを経て再会する。その懐かしい顔を見たとたん、前回会ったときから現在まで続いている長大な時間を感じ、人生を俯瞰しているような気分になる。
この22年間は本当にあっという間だった。大学を出て、サラリーマンになり、世界をまわって、文章を書くようになった。さまざまな出来事と感情が駆け足で流れていった。そのあいだ、(旅先で再開した)お父さんはラーメンを作り続け、3人の子が結婚し、7人のお孫さんを持った。そんな互いのドラマが、二本の放物線が交わるように、ある一点で再び交差する、お互いの目尻には笑いじわが増えている。人生というのは、なんてユニークなんだ。体の奥から力があふれてくる。
『快適自転車ライフ』
疋田智『快適自転車ライフ』(岩波アクティブ新書 2002)を読む。
疋田氏の著者は何冊か読んだが、本棚に眠ったままで読みそびれていた。自転車ツーキニストとして目覚めた頃の著書で、自転車の種類や海外の事情、自転車を活用した都市のあり方など、以後の著者の活動の原点とも言えるような内容となっている。
印象に残ったところを引用しておきたい。
心拍数は上がる、汗はしたたり落ちる。だが、それと同時にたとえようもない爽快感が身体の奥底から沸沸と沸き上がってくる。
目の前の風景が思考と同じスピードで流れていく。自分の力だけが推進力でありながら、自らの素の力を遥かに超えたスピード感。風と匂いと気温が、むき出しの顔と手と足を撫でていく。それらの快感がこんなに安価に身近に得られるということ。
そして、適度な緊張感の中で、色々な考えが頭の中を行き来する。思い悩んでいたことにふっと解決の妙案が浮かんだりもする。雨の中を哲学的になったりもする。色々なアイデアがライド中に浮かぶ。
これは私の個人的なことだが、私は活字、映像を問わず、原稿や構成のアイデアを常にサドル上で得る。自転車の楽しみはスポーツの愉しみというのと同時に、ある種、知的なものなのかもしれない。
『神苦楽島』
内田康夫『神苦楽島』(文春文庫 2012)を4分の3ほど読む。
2008年から2009年にかけて「週刊文春」に連載された小説の文庫化である。
淡路島を舞台としており、1980年にテレビのNHK特集「知られざる古代~謎の北緯34度32分をゆく」で紹介された「太陽の道」をモチーフとした旅情ミステリーである。「太陽の道」とは、ちょうど北緯34度32分上に、飛鳥時代や奈良時代の寺社が集中しているというもので、伊勢湾の神島から、三重県の斎宮跡、奈良県、和歌山、そして兵庫県の淡路島まで、ちょうど一直線に並ぶ。本作では、この太陽の道を信仰する宗教団体と大型公共投資に伴う不正に、名探偵浅見光彦が挑む。
後半の謎解きはつまらなかったので読み飛ばしたが、牛頭天王信仰などの蘊蓄は面白かった。牛頭天王とは、頭に牛の角を生やして、一見夜叉のようだけど、姿かたちは人間の格好をした神仏習合の神様である。東京品川の天王洲や八王子の地名も、牛頭天王に因むという。
『あこがれ微熱』
牧村僚『あこがれ微熱』(徳間文庫 2010)をパラパラと読む。
女子短大を舞台にした官能小説である。流れがあまりに性急で、濡れ場のシーンがなければ、自費出版小説レベルの内容である。

