内田康夫『神苦楽島』(文春文庫 2012)を4分の3ほど読む。
2008年から2009年にかけて「週刊文春」に連載された小説の文庫化である。
淡路島を舞台としており、1980年にテレビのNHK特集「知られざる古代~謎の北緯34度32分をゆく」で紹介された「太陽の道」をモチーフとした旅情ミステリーである。「太陽の道」とは、ちょうど北緯34度32分上に、飛鳥時代や奈良時代の寺社が集中しているというもので、伊勢湾の神島から、三重県の斎宮跡、奈良県、和歌山、そして兵庫県の淡路島まで、ちょうど一直線に並ぶ。本作では、この太陽の道を信仰する宗教団体と大型公共投資に伴う不正に、名探偵浅見光彦が挑む。
後半の謎解きはつまらなかったので読み飛ばしたが、牛頭天王信仰などの蘊蓄は面白かった。牛頭天王とは、頭に牛の角を生やして、一見夜叉のようだけど、姿かたちは人間の格好をした神仏習合の神様である。東京品川の天王洲や八王子の地名も、牛頭天王に因むという。