疋田智『快適自転車ライフ』(岩波アクティブ新書 2002)を読む。
疋田氏の著者は何冊か読んだが、本棚に眠ったままで読みそびれていた。自転車ツーキニストとして目覚めた頃の著書で、自転車の種類や海外の事情、自転車を活用した都市のあり方など、以後の著者の活動の原点とも言えるような内容となっている。
印象に残ったところを引用しておきたい。
心拍数は上がる、汗はしたたり落ちる。だが、それと同時にたとえようもない爽快感が身体の奥底から沸沸と沸き上がってくる。
目の前の風景が思考と同じスピードで流れていく。自分の力だけが推進力でありながら、自らの素の力を遥かに超えたスピード感。風と匂いと気温が、むき出しの顔と手と足を撫でていく。それらの快感がこんなに安価に身近に得られるということ。
そして、適度な緊張感の中で、色々な考えが頭の中を行き来する。思い悩んでいたことにふっと解決の妙案が浮かんだりもする。雨の中を哲学的になったりもする。色々なアイデアがライド中に浮かぶ。
これは私の個人的なことだが、私は活字、映像を問わず、原稿や構成のアイデアを常にサドル上で得る。自転車の楽しみはスポーツの愉しみというのと同時に、ある種、知的なものなのかもしれない。