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『写楽殺人事件』

第29回江戸川乱歩賞受賞作、高橋克彦『写楽殺人事件』(講談社文庫 1986)を読む。
2回目のワクチン接種で外に出かける気にならないので、久しぶりにじっくり本と向き合った。

東洲斎写楽をモチーフにしているのだが、殺人事件ということは忘れ、流通を重視した田沼意次から寛政の改革を実施した松平定信へと世相が180度転換する中で現れた謎の多い写楽にどんどん惹かれていった。登場人物と一緒に画期的な研究に携わってるような興奮を覚えた。間違いなく名作である。

『πのはなし』

金田康正『πの話』(東京図書 1991) を読む。
純粋な数学の話かと思ったら、著者は東京大学の大型計算機センターに務めており、コンピュータの性能をテストするベンチマーク・プログラムとしてπの計算を研究している学者であった。

古代ギリシャのアルキメデスが円周率を小数点以下2桁の3.14まで計算していた話や、πを求める計算式がいくつかある話など興味深かった。また、著者は執筆当時スーパーコンピュータで10億桁まで計算しており、小数点以下386,980,412桁目から6が10個連続並ぶとか、「123456789」と並ぶ箇所が2ヶ所、「987654321」が1ヶ所あるなど、超マニアックな話も面白い。

『目でみる化学』

山本和正・前川悦郎・高瀬福巳・鈴木一孝・岡本弘・吉田高年・中村亮『目でみる化学』(培風館 1985)をパラパラと読む。
大学の教養課程で使われていた教科書で、文系の生徒向けに化学式などはほとんどなく、繊維や調味料、洗剤などの日常品の分子構成が丁寧に説明されている。ただ、授業で用いられている教科書なので、一読しただけでは理解できないであろう。

ボイル=シャルルの法則の説明があったが、地理でも使える内容だったので書き留めておきたい。

気体の体積は、圧力に反比例し、絶対温度に正比例する。
体積(V)=定数(K)×絶対温度(T)/圧力(P)
圧力(P)×体積(V)=定数(K)×絶対温度(T)
したがって、気体の温度を上げると密度が小さくなり、その気体は軽くなる。熱気球はこの原理で空を飛ぶのである。

『相対論の意味』

アインシュタイン著・矢野健太郎訳『相対論の意味』(岩波書店 1958)をパラパラと読む。
アインシュタインの紹介ではなく、アインシュタインの著書そのものなので、数式が続く。積分の∮(インテグラル)が、楽譜のフォルテシモのように連続して登場するので、訳がわからない。
ただ、相対性理論が思いつきで発明されたものではなく、きちんと数式によって証明されたものだということだけは分かった。

『天平のひびき』

岸部成雄『天平のひびき』(音楽之友社 1984)をパラパラと読む。
音楽之友社という音楽系の出版社から刊行された本で、正倉院に保存されている琵琶や琴、鼓などの和楽器の特集となっている。日本古来の歴史というよりも、中央アジアの文化が色濃く滲み出た楽器が写真入りで紹介されている。