読書」カテゴリーアーカイブ

『スンダ生活誌』

村井吉敬『スンダ生活誌:変動のインドネシア社会』(NHKブックス 1978)を読む。
つまらなそうな本だったので読み流すつもりだったが、著者自身がインドネシアのパジャジャラン大学に留学した際の経験をもとに説明されており、今年最後の読書と思いじっくりと読んだ。

ちょうど1970年代半ばの頃の話で、インドネシアが緑の革命や工業化を迎えた混乱が丁寧に説明されている。特に肥料・農薬とセットになった高収量品種による緑の革命は、それ以前の農村共同体を破壊するものであり、底辺層の格差がより拡大し、都市に貧困層が流入し、インフォーマルセクターの増大に繋がっている。1970年代からジャワ島の首都ジャカルタへの一極集中が問題となっているが、その背景には緑の革命による農村破壊がある。また、日本企業が押し付ける都市化や工業化といった近代化が、伝統的なインドネシアの習慣を破壊していると著者は指摘する。

『やさしい行列とベクトル』

川久保勝夫『やさしい行列とベクトル:なぜヨットは風上に進めるのか』(日本実業出版社 1987)を読む。
東大理学部数学科を卒業し、阪大理学部で線形代数学を研究する著者が、一般の方向けに分かりやすく、行列とベクトルの基本と、両者の関係性について分かりやすく語る。スキーやゴルフ、マーケティングなど分かりやすい題材を挙げて、数学的な解説を加えている。

コリオリの力や偏西風の原理などもベクトルを使って説明するのだが、さっぱり分からない。一般の人が以下の説明を読んで理解できるだろうか。

コリオリの力は、運動方向に対して常に垂直であるために、仕事をしない力です。このことは内積を考えれば分かります(cosθ=0ですから)。

高度約5000メートル以上では北極に低気圧があり、等圧線は北極を中心にしてほぼ同心円をなしているのです。したがって北極に向かって風が吹き、コリオリの力で方向が右にかえられるのです。上空では摩擦係数が少ないから「地衡風」となり、ほぼ東に向かう、つまり西風になるのです。

『生命の誕生』

秋山雅彦『生命の誕生:先カンブリア時代・カンブリア紀』(共立出版 1984)をパラパラと読む。
地理の世界では「先カンブリア時代=安定陸塊」ということで、古生代以降の生物や陸性植物が登場する以前の変化のない時代と一括りに捉えがちである。
しかし、地球が誕生してから40億年もの長い年月であり、大気や海ができ、細菌などの原核生物からDNAを含む真核生物が誕生し、動物や植物の大元が作られた時代である。著者はそうした変化に富んだ時代として先カンブリア時代を捉えている。

『東孝の遺言』

東孝『東孝の遺言』(ベースボールマガジン社 2021)をパラパラと読む。
大道塾を立ち上げた著者が癌に罹り、自身の来し方と、大道塾の団体や空道の総合格闘技スタイルの行く末を語る。薄いグローブで寝技からも殴りあう現在の格闘技の隆盛に疑問を呈し、素手とスーパーセーフ、寝技からの打撃を禁じた著者の実戦性と安全性を確保した上での人間教育という道は揺るぎないものである。

『東北歴史紀行』

高橋富雄『東北歴史紀行』(岩波ジュニア新書 1985)をパラパラと読む。
著者は岩手県生まれで、東北帝国大学を卒業し、旧制第2高等学校講師を経て東北大学教授を定年まで務めた生粋の東北人である。
『奥の細道』の芭蕉の足跡を辿るという形を取りながら、東北各地の旧跡が丁寧に紹介されている。とりわけ奥州藤原氏が栄華を誇った平泉について造詣が深い。平泉は仙台の多賀城や福島の白川関、青森の外ヶ浜のちょうど真ん中にあって、東北地方全域を治めやすい位置にある。また四神相応といって、東に青龍(大河)が流れ、西に白虎(大道)、南に朱雀(沼沢湿地)、北に玄武(山)を背負っており、奈良や京都と全く同じ地形を有している。