地理」カテゴリーアーカイブ

「ガラパゴス沖に中国漁船団」

本日の東京新聞朝刊より。
南米エクアドルのガラパゴス沖の排他的経済水域(EEZ)付近で、大量の中国漁船団が操業を繰り返しており、周辺国が警戒を強めているとの記事が掲載されていた。

教科書15ページから少し解説を加えておきたい。海岸線から12海里(約22.2km)は、その国の「領海」といい、「領土」と同じく、他国の船が勝手に侵入することも通過することもできない。また、領海の外側で海岸線から200海里(約370km)は「排他的経済水域」といい、沿岸国が排他的に水産・海底資源を独占することができる水域となっている。他国の漁船が許可なしに操業することは許されていない。

但し、EEZは領海ではないので、他国の船が域内を航行したり、海底ケーブルを敷設したりすることは自由である。この点の判断が難しく、EEZ内で漁船が網を垂らしていたら違法だが、魚や資源を積んで通過することは全くお咎めなしになってしまう。つまり、限りなく黒に近い漁船でも、現行犯でしか逮捕できず、水域が広いほど、監視体制が甘くなり、言い逃れされてしまうのである。

エクアドルの主要紙コルメシオの社説にある「財源や船舶、人材はつつましいと認めざるを得ない」とのコメントは、まさにEEZの扱いの難しさを指摘している。

 

教科書16ページに日本の排他的経済水域の地図が掲載されているので確認してほしい。日本の最南端の沖ノ鳥島や最西端の南鳥島は、本土から遠く離れており、そのEEZ全域を警備することは難しい。その間隙を魚介類満載の中国漁船が航行している姿が確認されているのだが、逮捕までは至っていない。そんなイタチごっこが繰り返されている。皆さんはどう感じますか。

「ベラルーシ大統領『コロナ乗り越えた』」

本日の東京新聞朝刊に、ベラルーシのルカシェンコ大統領のコメントが掲載されていた。ベラルーシと言ってもピンとこない人が大半であろう。ロシアの西側、ポーランドの東側に位置し、人口も1000万人に満たず、一人当たりのGDPも7000ドル弱の中流国である。ロシアべったりの国である。日本との貿易もあまりなく、馴染みの薄い国である。

大統領を務めるルカシェンコ氏は「欧州最後の独裁者」とも称され、コロナ禍でも、ウォッカを飲めば治るとトランプ大統領ばりの奇想天外ぶりを発揮している。また、旧ソ連の指導者に憧れているのか、政治スタイルを変えようとせず、国内の自由な政治活動や表現の自由が大きく制限されている。

ドラえもんのキャラに例えるとスネ夫のような存在で、ロシアというジャイアンに陰に隠れつつ、ジャイアンを上手く利用して立ち振る舞うコバンザメのような立ち位置を保っている。米国の核の傘にすっぽり入ってひたすら経済を優先してきた日本によく似た国と言っても良い。

「ウイグルの『強制労働』火種に」

本日の東京新聞朝刊に、中国西部に位置する新彊ウイグル自治区に暮らすイスラム系少数民族の悲哀が報じられています。1・2組は授業中に新疆ウイグル自治区の人権問題に関するドキュメンタリー映像も紹介しましたが、覚えているでしょうか。

期末考査でも、新彊ウイグル自治区に触れたい思い、中国の農業とイスラム教の特徴の両方を答えさせる問題を敢えて出題しました。中国の少数民族や台湾の問題は決して対岸の火事ではありません。アメリカのような自国の都合を優先させる外交姿勢は賛同できませんが、日本や韓国、台湾、香港、ベトナム、フィリピンなどの東アジアの国々が共同して、中国の少数民族の弾圧に対し、人道的な観点から批判の声を上げていくべきです。そのためには、ウイグルやチベット、内モンゴルでの現状を正しく知ることが大切です。

期末前の授業でも強調したところですが、香港やウイグルでの抑圧と、インドとの国境紛争、南シナ海での軍事挑発の根っこは同じという視点が大切です。是非、以下の記事を熟読してみてください。

「バイカル湖生態系危機」

本日の東京新聞夕刊より。
こちらも生徒の発表で紹介されたロシアのバイカル湖である。バイカル湖はの湖水面積は約31,500km2で、琵琶湖の47倍にも及ぶ。最大水深は1700mで、その水量は地表の淡水の2割を占めるという。

ちなみに、地球上には13億8485万km3の水量があるが、そのうちの97.4%は海水である。残り2.6%の淡水3598.7万kmのうち、76.4%は南極やグリーンランドなどの氷河で、22.8%は地下水となっている。つまり、それらを除いた地表の湖水や河川水などを合わせても、淡水全体の0.8%に過ぎない。ざっと計算すると28.8万km3である。バイカル湖にはそのうちの2割、つまり6万km3の水量を湛えていることになる。

水深200mで太陽の光は水面の0.1%となるので、バイカル湖は世界でも珍しい淡水の深海魚が数多く棲息している。「ロシアのガラパゴス島」の異称もあり、1996年に世界遺産に登録されている。このバイカル湖周辺で自然保護区域の指定が解除され、森林伐採が激化するというのが記事の内容である。

シベリア鉄道は日本でも人気のツアーとなっており、ロシア国内のことに日本人がとやかくケチを付ける問題ではない。しかし、世界の共通遺産なので、何かしらの枠組みで対応することはできないのであろうか。

「イラン旅客機に米軍2機が接近」

本日の東京新聞朝刊に、民間旅客機に米軍の戦闘機が接近し、多数の怪我人が出たとの記事が掲載されていた。しかし、記事を読んでも、米国とイランの政治関係が理解できていないと、なぜ米国がイランに悪事を働くのか分からないであろう。

イランは第2次大戦後、英国企業や米国政府の支援を受けて石油開発を行ってきた。当時のイラン・パフレヴィー朝の国王だったパフレヴィー2世(在1941〜1979)は、米国の意のままに動く人物で、西欧との資源外交を重視するあまり、国民に犠牲を強要する独裁者であった。さすがに国内から反対の声が高まり、1979年にイスラム教の教えに帰るイラン革命が起こった。パフレヴィー2世は米国に亡命し、イラン国内の石油関連施設はすべてイランが接収することとなった。その際に米国大使館員を1年以上にわたって人質とする事件まで起きている。また、翌年1980年には米国側も報復に打って出て、隣国イラクに武器を供与し、イラン・イラク戦争まで誘発している。

他にも書きたいことがあるが、続きは後日。