『新源氏物語(三)』

田辺聖子『新源氏物語(三)』(新潮社 1979)を読む。
原本の巻で言うと朝顔の君と源氏のやり取りに嫉妬する紫の上を描いた朝顔の巻から玉鬘や紫の上の姿を夕霧が垣間見する野分の巻までとなっている。ちょうど紫の上の心が揺れ動く前半部の明石の君と後半部の女三の宮のエピソードの中間部に当たり、話の盛り上がりは少ない場面だが、紫の上の出家に対する憧れが徐々に顔を見せ、男社会が押しつけた貞淑と規範の中でいつそれが爆発するのやら気をもむような展開が続く。

『あさきゆめみし』

大和和紀『あさきゆめみし』(講談社漫画文庫)をここ何日かかけて読み切った。
普段ほとんど漫画を読み慣れないので、全7巻読破するのに相当な骨を折った。しかし、紫の上や明石の君の心情も巧みに描かれていて面白かった。

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『人生がつまらない人へ』

藤原和博『人生がつまらない人へ』(ダイヤモンド社 2002)を読む。
仕事や雑多な情報に振り回されている現代人に対して、地域や家族の支えの中で、自分だけの時間を持つことの意義を説く。だらだらテレビを見続けることや意味のない付き合いで時間を無駄にすることなく、仕事を辞め田舎へ引っ込んだり、早起きするなりして、自分と向き合う時間を作ることで、自分の将来の展望も見えてくるし、孤独になることで逆に自分を支えてくれる人の存在にも気付くことができると述べる。

『星になった少年』

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柳楽優弥主演『星になった少年』(2005 東宝)を観に行った。
市原ぞうの国」の設立にあたって実際にあった話を映画化したもので、少年と子象の心の交流が丁寧に映像化されていた。話自体はお涙頂戴的なありふれた展開なのだが、主演の柳楽優弥の演技が光っている。当人はジャニーズ顔でもなく、セリフも少ないのだが、一途で時に生硬な演技で、等身大の中学生高校生をうまく演じていた。いや、それ以上に象の場面に応じた演技が素晴らしかった!?

□ 映画『星になった少年』公式サイト □

〈心理学〉

 防衛機制とは、自我と無意識とその両者を司る超自我の3領域の相互関係が人間の意識や行動を規定するとしたフロイトの心的装置論を背景に構成された概念である。自我は無意識の表出と外界との調和を図りながら現実的に適応する機能を担うが、時に過大な負担に直面した場合、非常手段的に衝動を抑制しようとする。それらの機能を総称して防衛機制という。防衛機制は、自己の自尊心を保持し過度の不安から守る自我防衛機制と欲求不満事態から逃げていく逃避機制、自我を守るために他を攻撃する攻撃機制の大きく3つの機制に分類される。

〈自我防衛機制〉
 合理化:自分が行った失敗や不満の真の動機を隠し、理屈付けして弁解する機制
 投射:自己の内に存在する認めがたい欲求や感情を他者がもっていると認知する機制
 同一視:他者が自己に期待している態度や価値観を取り入れて自分の基準とし、それに従った行動を取るようになること
 抑圧:不満や葛藤などの原因となる欲求や動機を無意識の領域に押しやる機制
 補償:ある面における自己の不満を覆うために、他の面で努力を払って満足を得ること
 置換:ある感情が向けられている対象を別の対象に置き換えること
 昇華:補償・置換などの機制によって、本来の欲求が社会的文化的に価値の高い目的に向けられ努力すること
 反動形成:自己の弱点に対する非難を避けるために、正反対の行動や態度を取ること

〈逃避機制〉
 退行:解決困難な状況において自我が合理的な対処を放棄し、未発達な段階に逆戻りすること
 逃避:困難な状況から逃避することによって不安から逃れようとする消極的な機制
 固着:一定の感情や行動パターンあるいはその対象が固定し、流動性に欠ける状態

〈攻撃機制〉
 破壊的な攻撃や反抗的な態度により欲求不満を解消する機制
 私自身、仕事を抱えながら今年度より通信制の大学に入学をした。確かに大学の勉強をしたかったのだが、その動機の背景には3月までの仕事に対する不満があった。なかなか自分の思い通りの仕事が出来なかった。そしてそうした自分の仕事に満足が持てない現実を忘れよう忘れようとスポーツや趣味に興じていた時期もあった。
 そうしたストレスから逃れるために大学での勉強を選択したのだ。しかし、いざ段ボールいっぱいの教科書を見たとき私のやる気は失せていった。今締め切り間近になってレポートの作成に追われているのだが、ぎりぎりにならないと手を付けないという学生時代からの悪習は変わらない。しかも、つい昨日、締め切りという現実を忘れるようと、普段めったにやることのない風呂掃除に夢中になっている自分を発見した。福祉の用語でいっぱいになっている頭をリフレッシュするためという理由を思い描きながら……

 参考文献
 ラッシェル・ベイカー著・宮城音弥訳『フロイト』講談社現代新書、1975