『男だけの世界』

五木寛之『男だけの世界』(中公文庫 1973)を読み直す。
三十歳を過ぎたばかりの男が仕事の中で悪戦苦闘する話である。高校時代には何気なく読み捨てていた本であったが、この歳になって読むといろいろと考える場面も多かった。1968年から数年を経て、社会全体が情報化、管理化、緻密化していく中で、一匹狼的な人間が「敗北」していく姿をうまく描き出していた。そしてこの「敗北」の姿に、学生運動や労働運動、反戦運動といったものが強固な国家・産業権力によって潰されていった過程が象徴されているようにも感じた。

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