第144回芥川賞受賞作、西村賢太『苦役列車』(新潮社 2011)を読む。
表題作の他、自身のぎっくり腰と文学賞受賞に纏わる心模様を描いた『落ちぶれて袖に涙のふりかかる』の2編が収められている。
「現代版プロレタリア文学」との評価を聞き、早く読んでみたいとと思っていた本である。著者自身の体験を踏まえた私小説であり、変に政治や社会に向けて背伸びすることなく、19歳の日雇いの青年の等身大のやるせなさや怒りがストレートに表現されていた。
読みながら、20年前、神奈川の伊勢原から、町の名前すら聞いたこともなかった足立区の竹の塚まで、トラックに荷物と一緒に運ばれていった私自身の19歳の頃の風景をふと思い出し、感傷的な気分に浸った。