本日の東京新聞朝刊記事より。
インドの南東部に位置するスリランカで、経済危機の抗議デモが広がり、ついにゴタバヤ・ラージャパクサ大統領辞任が辞任という事態を迎えた。記事によると中国などから借り入れた多額の債務負担や国民受けを狙った減税に加えて、新型コロナウイルスの拡大で観光業が大打撃を受け、輸入に頼る食料や燃料が不足し、価格高騰が市民生活を直撃している。

記事の下に地図を付けたが、スリランカは中国の「一帯一路」経済圏構想の中核に位置付けられている。「一帯」は中央アジアを経由して欧州へ至る現代版シルクロード、「一路」とはインド洋を経由してアフリカ、欧州へ至る市場ルートである。中国はインド洋の支配に向けて、大国インドの喉に刺さった魚の骨のように、スリランカへの投資を続けてきた。

昨年の授業で紹介した、名古屋入管で死亡したウィシュマさんもスリランカの出身である。2019年の爆破テロ事件から、スリランカ経済は大きく下落しており、観光業は下火となっていた。2020年の新型コロナウイルスの感染拡大がそれに追い討ちをかけたが、現政権の失政こそが大きな要因となっている。

スリランカは資源に乏しく、輸出産業は繊維などの軽工業のみである。セイロンティーが有名であるが、昨年ゴタバヤ・ラージャパクサ大統領が「100%有機農業政策」という馬鹿げた政策を打ち出したため、スリランカ国内の農業が大混乱に陥っている。現在は化学肥料の輸入再開に踏み切ったようだが、世界的なドル高のために調達がうまくいかず、国内の食糧事情も悪化している。

日本は中国に次いで、スリランカの援助国となっており、2021年10月現在、日系進出企業は107社を数え、貿易額は約666億円(2021年)で、スリランカにとって重要な貿易相手国(輸入は第7位、輸出は第11位)となっている。日本がこれからスリランカにどのように対応していけるのか。ウィシュマさんの事件を教訓としたい。