『沈黙』

第2回谷崎潤一郎賞受賞作、遠藤周作『沈黙』(新潮文庫 1981)を数ページだけ読む。
1966年に刊行された本である。本棚の整理で、奥の方で埃をかぶった本を引っ張り出してみた。
文芸評論家佐伯彰一氏の解説に、ばっちりな紹介があったので内容を引用し、読んだつもりにしておきたい。

 もっとも、ここにおけるドラマの仕組みは、むしろ簡単率直なものだ。切支丹禁制のあくまできびしい鎖国日本に、三人のポルトガルの若い司祭が、潜入をくわだてる。島原の乱が鎮圧されてから間もない頃のことで、一きわ取締りの目もきびしく、何とか無事上陸を果し、日本人信徒との連絡をつけたものの、もちろん、間もなく捕われて、過酷な拷問を加えられ、ついに背教の止むなきにいたる。そもそもの当初から、失敗、敗北はほぼ明白な、いわば絶望的な挑戦のくわだてであり、果して事態は予測された通りに進行する。思いもうけぬ不意打ちは、まったく起らないというに近いのだから、ドラマとしては、わき道なしの直線的展開が一きわ目立つ。これほど一本道の、見通しのよすぎるほどの筋立てで、われわれ読者を一気に作中に誘いこむとはと、改めて小説家遠藤周作の力量のほどに感心させられる(後略)