東京都心をポタリング その3

漱石公園の向かいに、私が20年前に住んでいたアパートがある。
20年前、私は漱石公園の前にスクーターを止めていた。また、深夜にタイマー片手にムエタイロープで縄跳びをしていた。

確か12,3年前の深夜に、ドライブの帰りに立ち寄ったことがある。その時も、こんなボロアパートが残っているのかと驚いた記憶が残っている。
それからかなりの年月が経っているので、とっくに潰れているかと思いきや、20数年前の出で立ちのまま鎮座していた。また、偶然なのか、神のお導きなのか、普段は閉じられている門がたまたま開けられており、担当のおじさんが建物のチェックをしていた。話を聞くと、オーナーが亡くなられて、競売に掛けられているということだ。事情を話してアパートの中を見せてもらった。

いや〜、驚いた。私が20年前に住んでいたアパートそのままであった。鍵も掛かっていなかったので、部屋にも入ることができたのだが、私が出てから誰も入居していなかったのであろうか、私が退去時に大家さんにチェックしてもらった時の状態のまんまであった。本を積み上げていた畳の凹みまで見えたような気がした。時代の変化を感じることが多い昨今であるが、20年前の学生時代にタイムスリップしたような変な感じであった。

また、共同便所の真ん前に部屋があったのだが、玄関に立ち込める饐えたような匂いも全く変わらなかった。共同便所のドアと自分の部屋のドアがぶつかる建て付けの悪さも、今や懐かしい。20年前の当時ですら、昭和を感じる古めかしさだった。大家さんも当時70歳くらいで、火の用心の拍子木を叩いていた。そういえば、隣アパート(と言っても、窓から手を延ばせば届いてしまうくらいの距離だが)から般若心経が聞こえてきたっけ。

あと数ヶ月で潰されてしまうのであろうが、最後に見て、触れて、さらに匂いを味わうことができて良かった。

自転車の旅ならではの出会いであろう。車であれば通り過ぎてしまう風景に、触れ合うことのできる自転車での旅をこれからも大切にしたい。

   

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