川端裕介・川端るり子『ちゃりんこ西方見聞録―奈良からローマまでシルクロード15000キロ走破』(朝日新聞社 1991)を読む。
1989年に奈良・東大寺管長の平和メッセージを携えて日本を出発し、1年半かけて自転車でシルクロードを横断し、果てはバチカンでローマ法王に謁見するというスケールのどデカイ旅をした夫婦の記録である。偶然なのか、中国国内を旅行中に天安門事件が発生したり、イラン入国前にイラン革命の指導者ホメイニの死去のニュースを聞いたり、また冷戦崩壊と同時に各地で勃発するようになったイスラム地域の紛争を体験したりと、大変激しい政情の中をのんびりペダルを漕ぎ続ける夫婦の姿が印象的であった。インターネットや携帯電話が普及する前の牧歌的な時代である。また、当時社会主義国の中国では3ヶ月間近く監視役と一緒に旅をしたり、インフレに悩むユーゴスラビアの両替所の分厚い札束を受け取ったり、1989年当時の歴史の動きも感じる旅となっている。
旅の最後にはローマ法王に直に謁見し奥さんが妊娠してしまうなど、これまで読んだどの旅行記よりもスケールの大きい旅行記であった。
『ちゃりんこ西方見聞録』
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