芦生の自然を守り生かす会編『関西の秘境 芦生の森から』(かもがわ出版 1996)を読む。
地球温暖化やらエネルギーやらとスケールの大きい問題の話が続いたので、国内の自然に関する本をと思い手に取ってみた。
関東の人間には聞き慣れない地名だが、芦生という所は京都府北東部の美山町にあり、手つかずの原生林を含む5,100haの山林が広がる土地である。その内の8割が京都大学農学部の演習林として貸し付けられており、その半分は人手が全く入っていない原生的様相を残した森林となっている。
本書では、実際に芦生で暮らす人々の森林との共生について丁寧に触れられている。単純なスローガンで終わるだけの自然保護ではなく、自らの経済的な暮らしを守りながらも自然と共に生きようとする農業組合や、ダム建設反対運動に取り組む活動の模様が紹介されている。
1967年に計画が発表された「芦生揚水発電ダム」であるが、これは若狭湾の原発群とセットになっており、夜間の余剰電力を活用して水を汲み上げるという「原発の補完物」(芦生の自然を守り生かす会 井栗登会長談)なのである。原発は発電所の周囲だけでなく、遠く離れた森林をも破壊する「やっかいもの」だということがつくづく実感できた。
LInk:京都大学フィールド科学教育研究センター森林ステーション芦生研究林
Link:京都・美山 野生復帰計画