パンフレット研究:横浜商科大学

横浜商科大学のパンフレット(2014年度版)を読む。
パンフレット冒頭の大学の紹介の宣伝文句がそのまま大学の姿を伝えている。

本学には、巨大な貿易港であると同時に国際的な観光都市でもある「横浜」というロケーションを活かした「商学科」「貿易・観光学科」「経営情報学科」の3学科を設置しています。マーケティングや流通、会計などの基本をしっかりおさえ、貿易、観光やIT関連など高度な専門性を修得できるカリキュラムで構成されています。民間企業や研究所出身の教員を多数登用し、現場感覚を重視した実践的プログラムが充実しています。

ほぼ全入状態のFランクに位置する大学であるが、ゼミでの丁寧な動機漬けや資格取得支援、教室を越えた「まちなかキャンパス」での学びなど、入学してくる学生のレベルに合わせつつも伸ばしていこうとする大学の姿勢がよく伝わってきた。

1941年横浜市鶴見区に設立された横浜第一商業学校(現:横浜商科大学高等学校)を母体とし、1968年に2年前に開学した横浜商科短期大学を改組して、貿易、経営、会計情報、商学の4コースを設けた4年制大学が開学している。そして、6年後の1974年に商学科、貿易・観光学科、経営情報学科の3学科制に移行してから、これまで40年間一度も新しい学科やコースを設置していない。いたずらに大学院を設置したり、学部を増やしたりして教育の方向性を見失う大学が多い中、「商学教育の完成」という教育目的を貫く大学の姿勢は評価できる。

ゼミナールを売りとしており、学科紹介の最初のページが全てゼミで費やされている。教員の紹介、学びの中身、学生の姿の3つがよく分かる内容となっている。カリキュラム表もきちんと体系的に整えられて掲載されている。基礎教育も充実しており、中国語、ドイツ語、フランス語、スペイン語は全て3年次後半までの科目が設けられ、商学を支える科目も幅広く用意されている。また企業のように資格取得奨励金制度があり、大学指定の資格を取得したら5万円から10万円の給付が受けられる。おそらくは通信制高校や進路多様校の卒業生が受験勉強をせずに入ってきているのであろうが、大学の学びのシステムがきちんとしているので、きちんと学べばきちんと伸びていく大学である。

唯一の難点は、就職状況について全く触れられていないことである。「即戦力となる人材の輩出」を打ち出すからには、詳細な就職状況をパンフレットに明示して受験生や保護者の審判を仰ぐべきであろう。学生募集には苦労しているが、地元への就職実績を上げていけば、遠からず受験生は集まってくるはずである。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください