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「福井・恐竜博 新幹線延伸 年間118万人」

本日の東京新聞夕刊の一面に、福建立恐竜博物館が昨年7月にリニューアルオープンしてから、来館者が急増しているとの記事が掲載されていた。

少し視点を変えて記事を見てみたい。では、なぜ福井で恐竜の化石が見つかり、埼玉では見つからないのか。中学校で学習したと思うが、関東甲信越の大半はフォッサマグナという大陥没地帯に位置している。実は恐竜が活躍した中世代は海の底だったのである。2000万年前くらいから海底の火山活動と、太平洋プレートの西進による造山運動によって、海から陸地に変わったのである。そのため、数万年前のナウマン象の化石や貝塚などは見つかっても、ティラノサウルスなどの恐竜の化石は存在しないのである。

関東山地のある群馬県からは恐竜の化石が見つかっているが、東京、埼玉、千葉、神奈川、茨城、栃木、山梨からは一切見つかっていないのは、そういう理由である。

『氷河への旅』

樋口敬ニ『氷河への旅』(新潮選書,1982)をパラパラと読む。
著者は京都三高、北海道大学を経て、長谷大学水圏科学研究所の教授を務めていた方である。専門は氷雪物理学であり、本書も氷河の研究で世界各地に出かけた際の諸々がまとめられたコラム集となっている。

ほとんど読み飛ばしたが、エベレストの高さが8,848メートルについての話が興味深かった。エベレストの高さは、対流圏界面の上空10000メートルに近く、造山運動による隆起と風化による侵食の相互作用によって決まっているのではないかと疑問を呈する。対流圏界面とは、地面近くの対流圏とその上にある成層圏との境目で、地上から昇った空気はここで一応止められる。いわば大気の天井である。その高さは熱帯で高く、極で低く、季節によって変わる。エベレストのあたりでは、冬に1万メートルの高さにある。

圏界面の上では水蒸気が少なくなり、雲もない。そのため、エベレストに降り注ぐのは、雲に遮られることのない”裸の太陽光線”である。岩肌は昼に温められ膨張し、夜になると岩の放射冷却を遮る雲もないので、岩肌は急速に冷やされる。こうして昼と夜で加熱と冷却がはげしく繰り返されると、岩石についた雪が昼に溶けて割れ目に浸み込む。夜に水が凍って膨らみ、割れ目を拡大する。

造山運動によってじわじわ盛り上がってきたヒマラヤの高嶺は、この圏界面付近の激しい風化作用で削られる。かりに直径10センチの頂上の浮石が崩れ落ちれば、100年分の営々とした上昇量を失うことになる。

「100年前から変わったか」

昨日の東京新聞夕刊のコラムである。
コラムを書いたのは東京大学大学院情報学環の林香里教授である。
東京大学を中心に、女性の学ぶ機会がガラスの天井によって抑えられているという趣旨である。

しかし、著者は「この国で学問を目指す女性たちにとって、まだまだ世間は冷たく、逆風が吹き荒れている」と言うが、東京大学でしか学問はできないのか?

著者の勤務先はたまたま東京大学であるが、これが本郷から近いお茶の水女子大学でも同じ趣旨の発言をするのであろうか。東大よりもお茶女を選択する女子も多いはずである。

天下の東京大学に女性が少ないという目を引くような題材を利用して、我田引水に持論を展開しているだけである。

「なぜ東京大学には女性が少ないのか?」という問いよりも、「なぜお茶の水女子大学に男子が入学できないのか?」という方が切実である。栄養学や食物学などのを学びたい男子高校生の進学は極めて限られている。生活科学系統の学部を設置する大学の多くが女子限定の募集としている。国立大学でなぜ、男女共同参画が実現できないのか。

「米イランがホットライン」

本日の東京新聞夕刊に、イスラエルのガザ地区への軍事侵攻を巡り、イスラエルの後ろ盾であるアメリカとハマスを支援するイランの間で、直接政府関係者が連絡を取り合えるホットラインの開設で合意したとの記事が掲載されていた。

アメリカとイランは1979年のイラン・イスラム革命以降、国交を断絶している。アメリカはイランの親米政権を利用して原油の利権を確保しようとしていたが、イランの国民の間で不満が高まり、親米政権が倒されることになった。さらに444日間もアメリカ大使館が占拠され、アメリカの面目が丸潰れになった事件である。

そのイランとアメリカの間で、イスラエル情勢の緊迫化という外部要因でありながらも、対話の道が開かれたというのは、和平に向けた一歩前進である。

『地球の解剖』

A・カイユ、竹内均訳『地球の解剖』(平凡社,1983)を読む。
タイトル通りの内容で、地球の外形、地球の内部、地殻の解剖、地球の化学組成、地球の起源、大陸の運動、造山運動と章立てされ、翻訳も分かりやすい。ただし、原書は1970年に刊行された本で、プレートテクトニクスや地磁気の移動、海溝の形成などは、はっきりとは書かれていない。