『ことばの力』

川崎洋『ことばの力:しゃべる・聞く・伝える』(岩波ジュニア新書,1981)をパラパラと読む。
著者自身が「わたしにとっては、いちばんむずかしい項目について述べなければならなくなりました。というのは、私自身ずーっと、自分の感じたことを、散文ではなく詩で表現してきましたから、「自分の考えを伝える」ということは、得意ではないと思っているからです」と本音をもらしているように、川崎氏は韻文専門の人と思い込んでいた。

しかし、新書丸ごと、言葉や用例、詩を参考にしながら、あいさつの言葉や驚きの言葉、悪口、ユーモア、悲喜、恋愛、電話の語り口、方言など、言葉にまつわる説明が分かりやすく書かれている。読みやすく味わい深い評論で、かつ、ところどころに著者自身の体験や感情も挿入されており、一流の評論文となっている。