泉優二『サッカー大好き!』(岩波ジュニア新書 1994)を読む。
著者はサッカーの専門家ではなく、文筆家である。少年サッカーチームの監督を務め、長年にわたる海外サッカーの取材の経験を交えて、サッカーの魅力や日本人のあるべきサッカーとの関わり方について述べている。ちょうどJリーグが発足したばかりだったので、余計に日本にサッカーが根付き、海外チームに伍して強くなってほしいと、肩に力の入った文章となっている。
著者はサッカーが世界の団体スポーツの王者になった背景について次のように述べている。
では、なぜそれだけ受け入れやすいスポーツだったのでしょう。
道具が最低限ボールだけでよい、という経済的な理由も普及に役立ったことはたしかですが、もうひとつ、普及に役立ったのは、個人個人の特徴を生かせる、性格や運動能力のちがいをむしろ歓迎するスポーツだということです。ですから性格的な向き不向きがなく、自分のポジションがどこかにある。
同じように、これからが重要なのですが、国民性や、民族性という大きな枠でも、その特徴を生かせるスポーツだということです。
イングランドはイングランドの、ブラジルはブラジルの、そして他の国でも、ある国のサッカーは、他の国のサッカーと全くちがって見えるほどの特徴を、当初は持っていました。それだけ自由にのびのびと自分たちを表現できたということ、そのことが世界への普及をよりたしかなものにしたといえると思います。
著者の意見に沿ってみると、総合格闘技(MMA)の人気の理由も、サッカーの普及に近いものがある。総合格闘技も必要なものはグローブくらいである。また、個人個人の特徴を生かせるスポーツで、国民性や民族性といった特徴も大きな要因として加味される。サッカーというよりも、これからのスポーツのあり方を示すものだと言えるかもしれない。