本日の東京新聞朝刊にタリバン政権が復権してから1年が経つアフガニスタンの情勢が伝えられていた。アフガニスタンで支援活動を続けるNPO法人「難民を助ける会」のバセルさんは「アフガニスタンは今、食料をはじめあらゆる必要物資を支援に頼っているが、支援は一時的で持続的ではない。人々に仕事の機会を与えてほしいと訴える。
外務省の統計でみると、アフガニスタンの一人あたりのGNIは530ドルと世界で一番貧しい国であり、2017年で失業率は11.2%となっている。2018年の統計によると、74億ドルの輸入に対し、輸出は9億ドルに過ぎず、内訳はドライフルーツ(35%)、薬草(15%)、果物(11%)、鉱物(11%)、野菜(8%)等となっている。資源に恵まれておらず、また内陸国なので中国や東南アジアで成功した輸出加工区のような工場誘致も難しい。そうした中で、バセルさんが訴える「持続的」な支援はどのようなものがあるのか。
2019年にアフガニスタンで凶弾に倒れた中村哲医師は「緊急のアフガニスタンの問題は、政治や軍事問題ではない。パンと水の問題である」と語る。中村医師は40年以上にわたり、パキスタン・アフガニスタンで安全な水と農業用水の確保に向けた灌漑事業に取り組んできた人物である。
アフガニスタンでは降水量の統計が取られていないが、2000年頃から干ばつが度々発生するようになり、小麦や果物が大きな被害を受けている。中村医師は独学で土木を勉強し、アフガニスタンに用水路の建設を進め、65万人の命を救ったとも言われている。(まさに国葬に値する人物である)現在、国際NGO(NPO)団体ペシャワール会で中村医師の思いを受け継ぎ、アフガニスタンで灌漑水利事業を進めている。
中村医師は2001年、タリバンが世界的に有名なバーミヤンの仏教遺跡などを破壊したときに次のように語っている。
今世界中で仏跡破壊の議論が盛んであるが、我々は非難の合唱に加わらない。アフガニスタンの国情を尊重する。暴に対して暴を以て報いるのは、我々のやり方ではない。
餓死者百万人と言われるこの状態の中で、いま仏跡の議論をする暇はないと思う。少なくともペシャワール会=PMSは、建設的な人道的支援を、忍耐を以て継続する。我々はアフガニスタンを見捨てない。
つまり、政治や民主主義などの能書きを語る前に、安全な水と安心して暮らせる食料の確保こそがアフガニスタンに最も必要な支援であると述べるのだ。20年以上も前の言葉である。
一介の地理教諭であるが、授業の中でこうしたことに思いを寄せるような生徒を育てていきたい。また思いだけでなく、実際の医療や農業、建設現場で力を発揮するような若者を送り出していきたい。