月別アーカイブ: 2022年8月

「穀物船第1便立ち往生」

本日の東京新聞朝刊に、ウクライナ産のとうもろこしを積んだ貨物船が、品質を理由にレバノンの業者に買取を拒否され、海上を彷徨っているとの記事が掲載されていた。

注目してほしいのが、貨物船がシエラレオネ「船籍」ということだ。実は船にも人の国籍と同じように「船籍」というものがある。しかし、シエラレオネは西アフリカに位置し、ウクライナやレバノンから遠く離れている。

こうした船主が船籍を「便宜」的に外国に置いた船舶を便宜置籍船とよぶ。貨物船やタンカーなど巨大な船になると登録料や税金が大きくなり、登録手続きや安全に関する規制などが厳しくなる。こうした負担を逃れるために、世界中の船舶業者が書類上だけ他国に登録するのが通例となっている。一方、置籍船の多い国にしてみれば、貴重な外貨収入源となり、お互いにウィン・ウィンの関係と言える。

船籍のランキングは以下の通りである。日本も10位にランクしているが、実は日本の商船の6割がパナマ船籍となっている。シエラレオネ船籍は第53位となっている。乗組員の大半がウクライナ語もアラビア語も理解しておらず、レバノンの商社と船舶業者との連絡が上手くいかなかった点が背景として指摘されるのであろう。

一般社団法人日本船主協会のホームページ資料より

一般社団法人日本船主協会のホームページ資料より

『田園発 港行き自転車』

宮本輝『田園発 港行き自転車』(集英社 2015)の上巻を読む。
久しぶりにA4サイズの地図帳を取り出して、富山県内の地名を確認しながら読み進めた。
3つの家族の物語が絡み合いながら展開していく群像劇となっている。
かなりのボリュームだったが、一気に読み進めた。
富山から入善町までサイクリングをしている登場人物をして、作者は次のように語らせる。

文化財保護と銘打って、古民家のあちこちを補修して安化粧で装い、「なんとかの道」だとか「なんとかの宿跡地」だとか名づけて、おじさんやおばさんが観光バスで乗りつけても、そのなものはせいぜい十五分も歩けば底が知れてしまって、おいしくもない、というよりも、たいていはまずい草餅とか名代のなんとか蕎麦を食べさせられて、古くて風情のある商家ねェ、なんて言って、それきり思い出しもしない観光用の町が、日本中に造られてしまった。
しかし、そんな人口の名所は映画のセットと同じなのだ。
そこでいまを生きている住人の気配もなければ息吹もない。喜怒哀楽のない、ただ古さだけを売り物にした人工物だ。

Twitter投稿より。
マクドナルドの店舗数は、2022年7月現在、国内2,957を数える。
人の歩く速度が平均4km/hと言われているので、半径2kmというと徒歩30分の距離である。
地理探求の内容となるが、食事や日常品の購入などの「最寄品商圏(一次商圏)」とに

「日本にミャンマー軍人『留学』」

本日の東京新聞朝刊に、昨年のクーデターで実権を握った軍政府の軍人を日本の防衛省が受け入れているとの記事が掲載されていた。

石橋通宏参院議員は「多くの人が虐殺される中でも受け入れるのであれば、いかなる理由か堂々と説明すべきだ」と強調する。防衛省での受け入れの是非をめぐっては、旧統一教会との関係が取り沙汰された岸信夫前防衛相が辞任したので、現防衛大臣が国会で説明すべきことである。

気になったのが、軍事ジャーナリストの前田哲男氏のコメントである。

中国との接近を阻むためにも、国軍とパイプを断ちたくない。人権問題を抱えるミャンマーと日本の関係を認めがたい米国も、中国包囲網形成のために許容している。

現在のミャンマー国軍政府の評価は、中国との関係で考えると途端に難しくなる。軍事政権だから批判するのは簡単である。では、中国政府とずぶずぶの関係になっていた前アウン・サン・スーチー政権はどう総括すべきなのか。

新聞を読んでいる限りの情報で判断すると、私はミャンマー軍政権は100%批判の対象ではないと考えている。日本がミャンマーとの関係を保つという思惑でミャンマー軍人を受け入れるのは必ずしも否定すべき話ではない。というのは、ノーベル平和賞受賞のアウン・サン・スーチー率いる国民民主連盟(NLD)の政権時代があまりに胡散臭いからだ。

ただし、決して現在の軍政権を肯定するわけではない。非道な行為は決して容認できない。では返す刀で前NLD政権はどうだったのか。中国共産党の一帯一路経済圏に加担し、イスラム系少数民族ロヒンギャの迫害では数千人が犠牲になったとも言われている。いずれにせよ少ない情報で白黒つけて判断するのは危険である。

『エネルギー改革が日本を救う』

中島洋GLOCOM教授著『エネルギー改革が日本を救う:主役交代、技術・政策・地域が主導する再生可能エネルギー革命』(日経BP社 2014)を卒読した。
興味を引いたところを書き留めておきたい。

私もこのホームページで利用しているさくらインターネットは、現田中邦裕社長が舞鶴工業高等専門学校在学中に創業されている。本社は大阪にあるが、データセンターは北海道の石狩にある。北海道の冷涼な外気を利用した冷房によるエネルギー効率の向上により、電力消費を抑えているとのこと。

常に一定方向から風が吹いているオランダやドイツ、デンマークでは早くから陸上風力発電が普及している。しかし、日本はそうした恒常風に恵まれていないため、陸上風力発電は大きな遅れをとっている。福島県沖で始まった(現在は終了しているが)洋上風力発電は、既存の技術がほとんど通用しない未開拓分野である。

大分県は日本一の温泉県で、源泉数、湧出量ともに日本一である。厳選数は2位の鹿児島県や静岡県を大きく引き離し、湧出量も2位の北海道や鹿児島県をかなり引き離している。

大分県では、2013年から2014年にかけて3カ月ほど、トヨタ車体の超小型電気自動車のコムスを使う実験を行なっている。道路の脇に、屋根付きのバスの停留所のような形状の充電スタンドを設置し、屋根に取り付けた太陽パネルで起こした電気を鉛蓄電池にため、充電するという仕組みである。

福島の原発事故以降、運転中の原子炉だけではなく、使用済み核燃料もプールの中で長期間冷却し続けなくてはいけない、という現実が知れ渡ってしまった。テロの攻撃目標は使用済み燃料の冷却用電源の破壊へと移る。発電会社はその防御のために利益には結びつかない多額の投資を迫られる。
仮に再稼働した場合に増え続ける使用済み核燃料廃棄物をどうするのか。かつて発電の燃料であるプルトニウムを抽出して核燃料サイクルの中で再利用するはずだった。その核燃料サイクルは予定を大きく遅れて運転のめどが立っていない。断念すべきだ、という声も強まっている。
そうなれば、使用済み燃料の持っていき場所がなくなる。一時的に保管すると思っていた原発の脇に設けた冷却プールは満杯に近づいている。短期の保管だと思えば冷却コストも気にならなかったが、期限が見えない保管となると長期間の継続的な多額の経費負担を覚悟しなければならない。これまでは燃料に転換する経済価値のある有形資産として保管してきたが、これからは経済価値のない廃棄物である。それどころか取り扱いに多額のコストがかかる負の資産である。
激しいコスト競争にさらされる発電会社が果たして「原発」を引き受けられるか。まだ総括原価主義を原理とする現在の電力会社にいると実感できないが、発電会社への配属が決まって事業計画を作り直す時になって、「負の遺産」となる原発を、新発電会社が引き受けないだろう、というのが村上憲郎の「経営感覚」である。原発は引き受け手がなく漂流し、表舞台から消えていく可能性は否定できない。