群ようこ『贅沢貧乏のマリア』(角川書店 1996)を読む。
群ようこさんの本を読むのも10数年ぶりのような気がする。この本は著者自身の家族や生活の一コマを起点に、文豪・森鴎外の娘の森茉莉の自由奔放な生き方を照射するという意欲作となっている。
森鴎外には長男・於菟(おと)、長女・茉莉(まり)、次女・杏奴(あんぬ)、次男・不律(ふりつ)、三男・類(るい)の5人の子どもがいる。長男の於菟は先妻(といっても1年半の生活だが)との子どもで、次男の不律は生後すぐに亡くなっている。長女の茉莉は鴎外の再婚相手との最初の子どもである。森鴎外の育て方なのかどうか分からないが、茉莉はおよそ当時の日本の淑徳を規範とした女性の生き方には馴染めず、周囲との誤解が相当あったようだ。裁縫や育児を徹底して嫌い、パリジェンヌに憧れお洒落を求める姿など、最近のお騒がせ芸能人のような振る舞いである。
群ようこさんは、そうした森茉莉のお人形さんのような人生を、尊敬と共感をもって描き出す。