中島洋GLOCOM教授著『エネルギー改革が日本を救う:主役交代、技術・政策・地域が主導する再生可能エネルギー革命』(日経BP社 2014)を卒読した。
興味を引いたところを書き留めておきたい。
私もこのホームページで利用しているさくらインターネットは、現田中邦裕社長が舞鶴工業高等専門学校在学中に創業されている。本社は大阪にあるが、データセンターは北海道の石狩にある。北海道の冷涼な外気を利用した冷房によるエネルギー効率の向上により、電力消費を抑えているとのこと。
常に一定方向から風が吹いているオランダやドイツ、デンマークでは早くから陸上風力発電が普及している。しかし、日本はそうした恒常風に恵まれていないため、陸上風力発電は大きな遅れをとっている。福島県沖で始まった(現在は終了しているが)洋上風力発電は、既存の技術がほとんど通用しない未開拓分野である。
大分県は日本一の温泉県で、源泉数、湧出量ともに日本一である。厳選数は2位の鹿児島県や静岡県を大きく引き離し、湧出量も2位の北海道や鹿児島県をかなり引き離している。
大分県では、2013年から2014年にかけて3カ月ほど、トヨタ車体の超小型電気自動車のコムスを使う実験を行なっている。道路の脇に、屋根付きのバスの停留所のような形状の充電スタンドを設置し、屋根に取り付けた太陽パネルで起こした電気を鉛蓄電池にため、充電するという仕組みである。
福島の原発事故以降、運転中の原子炉だけではなく、使用済み核燃料もプールの中で長期間冷却し続けなくてはいけない、という現実が知れ渡ってしまった。テロの攻撃目標は使用済み燃料の冷却用電源の破壊へと移る。発電会社はその防御のために利益には結びつかない多額の投資を迫られる。
仮に再稼働した場合に増え続ける使用済み核燃料廃棄物をどうするのか。かつて発電の燃料であるプルトニウムを抽出して核燃料サイクルの中で再利用するはずだった。その核燃料サイクルは予定を大きく遅れて運転のめどが立っていない。断念すべきだ、という声も強まっている。
そうなれば、使用済み燃料の持っていき場所がなくなる。一時的に保管すると思っていた原発の脇に設けた冷却プールは満杯に近づいている。短期の保管だと思えば冷却コストも気にならなかったが、期限が見えない保管となると長期間の継続的な多額の経費負担を覚悟しなければならない。これまでは燃料に転換する経済価値のある有形資産として保管してきたが、これからは経済価値のない廃棄物である。それどころか取り扱いに多額のコストがかかる負の資産である。
激しいコスト競争にさらされる発電会社が果たして「原発」を引き受けられるか。まだ総括原価主義を原理とする現在の電力会社にいると実感できないが、発電会社への配属が決まって事業計画を作り直す時になって、「負の遺産」となる原発を、新発電会社が引き受けないだろう、というのが村上憲郎の「経営感覚」である。原発は引き受け手がなく漂流し、表舞台から消えていく可能性は否定できない。