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『中高一貫校』

日能研進学情報室『中高一貫校』(ちくま新書 2008)を読む。
首都圏約300あるといわれる私立公立中高一貫校の学校選びから受験,学校生活,進学状況が紹介されている。
一口に進学重視の中高一貫校といっても,その性格は多様である。学習院や成城学園,成蹊,武蔵などの戦前の7年制高校の流れを汲む学校や,麻布や開成など明治期に出来た学校,品川女子や実践学園など大正期に出来た学校など様々である。また,女子学園や栄光学園などのキリスト教や仏教などの宗教系の学校,豊島岡女子学園のような家政・裁縫系の流れを汲む学校に加え,海城や攻玉社などの士官学校の流れを汲むものや,大学付属,地域の公立中学校の連携校など,学校の数だけ系譜があるといっても良い。

近年は付属や系列を超えて大学との連携を深め,付属校のように高校内の推薦だけで有名大学に入れるコースを設ける学校や,付属校でありながら当該大学への進学の保証した上で,国立大学受験や慶応のAO入試などにチャレンジできる学校も注目を集めている。日能研が出しているので中高一貫校のメリットばかりが書かれているが,学校宣伝の戦略や説明会でのプレゼンの成否で受験生が大きく増減するなど,少子化のなか業界の競争の激しさが垣間見える。

『古代史で読み解く桃太郎伝説の謎』

関裕二『古代史で読み解く桃太郎伝説の謎』(祥伝社黄金文 2014)を半分ほど読む。
日本人の誰しもが知っている桃太郎であるが、その成立ははっきりとしていない。ヤマト建国直後の4世紀に活躍した吉備津彦命がモデルだと著者は推定する。吉備津彦命は第7代孝霊天皇の子で、崇神天皇の時代に四道将軍のひとりとして、西道(山陽道)に遣わされた人物であり、岡山県・岡山市にある吉備津神社に祀られている。ただし、孝霊天皇は実在が疑問視される欠史八代(第2代から第9代までの天皇)の一人であり、吉備津彦命も『日本書紀』編纂段階での皇統に箔を付けるために設定されたキャラという見方もできる。『日本書紀』がヤマトの正当性を喧伝するための「正史」という性格