『原発をゼロにする33の方法』

柴田敬三編『原発をゼロにする33の方法』(ほんの木 2013)を読む。
前半では,3年前に亡くなられた柴田氏が,デモや裁判,国民投票,政治家への働きかけ,自治体へのお願い,英語での情報発信,不買運動,ライフスタイルの変更など原発ゼロに繋がるあらゆる手段を紹介する。また,後半では刊行当時反原発運動の第一線で活躍されている12人の方々へのインタビュー記事がまとめられている。

読み進めながら,あの危険極まりない原発を安全だと偽って推進できたのは教育の力が大きいと改めて実感した。何事も疑わず鵜呑みにする教育がもたらした大いなる過ちである。であるならば,原発をゼロに追い込んでいくのも教育に可能性を見いだせるのではないだろうか。著者の柴田氏は,大人のウソを見破り,将来に備えて正しい知識と感性を持ち,自分たちの未来に対し,何が大切かは自分たちで決めてゆく「原発リテラシー」を育成すべきだと述べる。脱原発に向けて,正しく日本の置かれた地形的状況,エネルギー問題,政治や経済の問題を考えていく力の養成が求められる。

3.11の直後に地元の杉並区高円寺で「反原発デモ」を決行したリサイクルショップ代表の松本哉氏は次のように述べる。

この期に及んで,まだ原発を推進しようという,とんでもない連中が国家権力の中枢にいますよね。そういう奴らを生み出してしまった世の中自体に問題があると思っていて,デモもやりにくい様な世の中になっていたりしますよね。皆が自分のやるべきことをお上に任せてきたから,結局お上が勝手に謎の利権を作り上げてしまった。そういう日本の抱える悪い構造が凝縮されて原発事故が起きたと思うんです。
この社会の雰囲気を変えないと,仮に原発の問題が解決したところで,他の原発じゃない原発のようなものが,いくらでも出てきて,毎回その度に大規模な反対運動をしなきゃいけなくなります。巨大なデモをやるのもキリが無いし,毎回デモなんてやりたく無いじゃ無いですか。だから,もうちょっと,日本の異様な雰囲気,というか,謎のムラ社会を壊さないと,と,それをすごく思っているんです。
だから原発はもちろん関心があるんですが,今の時点では反原発活動というのは今いちピンと来ない。もっと色んな文化とか,色々な生き方をごちゃ混ぜにして,ちゃんと自分の人間的な感性を取り戻す,それをやっていかないと,この社会は終わるんじゃないかという危機感が,今,大きいですね。どっちかと言ったら。
一番大事にしたいのは自治。自分たちで自分たちのことをちゃんとやっていくという。それは町づくりもそう。今,モラルすら全部上から決められる世の中じゃ無いですか。そこまで行ったら,「自分たちが何もしませんよ」と放棄して全部人まかせにしちゃってる様なものです。そこが根本的な問題のような気がしますね。

《本書で紹介されている反原発運動情報》