手塚治虫『ザ・クレーター』(秋田文庫 1994)を読む。
1969年から1970年にかけて、「少年チャンピオン」に連載された短編作品である。話の内容も、地域、時代も全く異なるが、ほぼ全ての作品でオクノリュウイチなる青年男性が主人公として登場し、人生の不条理なるものが様々に形を変えて語られる。
その中に死んだ女性が同年代の男性の心と入れ替わる『オクチンの奇怪な体験』という話がある。男性トイレに女性の心のままで入ってしまい恥ずかしがるシーンや、外見は活発な男の子なのに行動はお淑やかな女の子なので周囲の誤解を招くシーンなど、ちょうど先日見た『君の名は。』に設定が良く似ていた。手塚治虫氏が卓越しているのか、新海氏が参考にしたのかは不明だが、他の作品も含め、生死の境目や、人生の選択、記憶の不思議というものを考えさせる内容であった。
『ザ・クレーター』
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