日別アーカイブ: 2015年7月26日

『ユーラシア大陸横断自転車2万キロの旅』

eurasia

加藤功甫、田澤儀高『ユーラシア大陸横断自転車2万キロの旅』(エイ出版社 2012)を読む。
横浜国立大学の大学院生の2人による、ポルトガルから日本までの11か月に及ぶ自転車旅行記である。
旅の途中でもスカイプで週に1回日本のラジオに出演したり、ブログを日々更新したり、WiFiのある部屋に泊まったりと、昨日読んだ1980年代後半のアナログな旅事情とは大きく雰囲気を異にしていた。世界各地での現地の人たちとの交流エピソードと子供たちの笑顔や綺麗な風景の写真が中心となっている。二人の会話体で話が展開していくので、あっという間に読み終えた。
しかし、延々と拡がる砂漠や爆風の中を往く過酷な旅なのだが、どこかしら「猿岩石」のヒッチハイクのような、箱庭的な冒険という印象は拭えなかった。いつでもどこでもコミュニケーションが取れるデジタルツールの進化のためか、誰一人としていない地平線の彼方まで続く道を行く孤独な旅が、ブログのネタ探しにスケールダウンをしてしまっている。
果たして我々はこの事実にどう向き合えばよいのか。

『ちゃりんこ西方見聞録』

川端裕介・川端るり子『ちゃりんこ西方見聞録―奈良からローマまでシルクロード15000キロ走破』(朝日新聞社 1991)を読む。
1989年に奈良・東大寺管長の平和メッセージを携えて日本を出発し、1年半かけて自転車でシルクロードを横断し、果てはバチカンでローマ法王に謁見するというスケールのどデカイ旅をした夫婦の記録である。偶然なのか、中国国内を旅行中に天安門事件が発生したり、イラン入国前にイラン革命の指導者ホメイニの死去のニュースを聞いたり、また冷戦崩壊と同時に各地で勃発するようになったイスラム地域の紛争を体験したりと、大変激しい政情の中をのんびりペダルを漕ぎ続ける夫婦の姿が印象的であった。インターネットや携帯電話が普及する前の牧歌的な時代である。また、当時社会主義国の中国では3ヶ月間近く監視役と一緒に旅をしたり、インフレに悩むユーゴスラビアの両替所の分厚い札束を受け取ったり、1989年当時の歴史の動きも感じる旅となっている。
旅の最後にはローマ法王に直に謁見し奥さんが妊娠してしまうなど、これまで読んだどの旅行記よりもスケールの大きい旅行記であった。

□ JACC日本アドベンチャー,サイクリストクラブ 日本国際自転車交流協会の公式webページ □
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