第36回すばる文学賞受賞作、新庄耕『狭小住宅』(集英社 2013)を読む。
殴ったり蹴ったりの暴力や過労死寸前の労働環境、人間性を否定する暴言など、「ブラック企業」を代表するような不動産販売業で働くサラリーマンの成長(?)が描かれる。
一流大学で開発経済を勉強していた主人公は、家を売ってなんぼの体育会的な企業体質の中で、客を騙してまで「殺す(売る)」ことへの抵抗が徐々になくなっていく。そして、終いには友情や愛情といった人間性までが消え、自らの心身の健康を損なってまでも周囲からの評価を高めようと懸命になる「ガンバルマン」に変身していく。
仕事の成果でしか自分の存在を見出せない主人公に対して、筆者は悲しい結論を用意するが、決して小説だけの話ではない。自分自身の働き方も含めて考えていきたい。
『狭小住宅』
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