日別アーカイブ: 2015年2月23日

『地球環境 危機からの脱出』

レスター・ブラウンほか『地球環境 危機からの脱出:科学技術が人類を救う』(ウェッジ選書 2005)を読む。
2004年11月9日に開催された、JR東海主催の「高速鉄道会議2004〜東海道新幹線開業40周年記念〜『地球の未来のために』〜高速鉄道は何ができるのか」と題されたシンポジウムを採録したものである。
帯水層の枯渇の問題や酸化チタンによるソーラー・ハイドロジェン・システムや光触媒の普及拡大、水素の太陽エネルギーの活用の余地など、持続可能な地球環境に対する科学技術のアプローチについて分かりやすく説明されている。

JRグループが主催しているので、開発途上国で自動車が普及していくと地球環境の負荷が拡大するという結論に集約されてしまうのだが、環境問題について、技術面だけでなく、経済的側面からも迫っており、環境問題の入門書として読みやすかった。
孫引きになってしまうのだが、ワールド・ウォッチ研究所の所長を務めるオイシュタイン・ダールの言葉を紹介したい。

社会主義は、価格に経済の実態を反映させなかったために崩壊した。資本主義は、価格に生態学的なリアルコストを反映させないために崩壊するかもしれない。

パネリストの一人である松井孝典東大大学院教授は次のようにまとめる。

(ノーベル賞を受賞した小柴昌俊教授が研究していたニュートリノだが、現在私たちの社会を築く上で何ら利用価値はないという話に続いて)「科学技術は地球文明を救えるか」というテーマで話している中で、具体的な話というのは難しいと思うのですが、やはり私は、直接の応用がなくても自然を理解することが、私たちがこれからの社会をどう作っていくかを考えるときには、非常に重要であると思います。地球や生命、あるいは宇宙や物質を私たちが理解することが、その目的はそれを知るということだけであっても、実は広い意味では、私たちがどういう社会を築いていくのかというところに関係しているのだと思います。

  • 帯水層
    地下水が蓄えられている地層。通常は、粘土などの不透水層にはさまれた、砂や礫からなる多孔質浸透性の地層を指す。実際には、この帯水層が何層にも重なっている場合もある。この地層では、地下水の流速が比較的速いため、大量の地下水をくみ上げることができる。しかし、急激な地下水のくみ上げにより、帯水層中の水の移動だけでは水の補給が間に合わなくなると、帯水層を取り囲む不透水層中の地下水が絞り出されて地層が収縮し、地盤沈下が発生する。