樋高剛『愚直に:復興・環境を軸として』(年友企画 2012)を読む。
地元の後援会に配布する目的で作られたのであろうか、震災当時民主党の環境大臣政務官として活躍された著者が、当時の民主党の綻びや敬愛する小沢一郎氏への思い、また、自らの政治活動の手腕とその実績を誇るという内容である。著者の樋高氏は、現在「生活の党と山本太郎となかまたち(笑)」党に所属しており、残念ながら落選の身である。
いわゆる自らを売り込むための「政治家本」なので、とやかく言うことはないが、著者が主導したという2011年5月施行の「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理指針」や2011年8月公布の「東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法」、2011年8月に成立した「放射性物質汚染対処特措法」などの成立の背景が整理できた。
これまで災害廃棄物は一般廃棄物とみなされ、市町村で処理を行うことされてきた。しかい、東日本大震災では市町村の行政機能が損なわれてしまったため、県に委託する形が多くの自治体でとられることになった。しかし岩手県と宮城県では県内での処理が困難なため、環境省が間に入り、県外で処理を行う「広域処理」計画が策定されることになった。また、福島県内の災害廃棄物については、8,000Bq/kgを超える「対策地域内廃棄物」に該当するため、県外での広域処理もできず、国による直轄の処理が適用されている。
また、「放射性物質汚染対処特措法」では、計画的避難区域に指定されていた地域は「汚染特別地域」に指定され、国が直轄で汚染を行うこととなった。除染除去土壌等は、中間貯蔵施設に搬入後30年以内に県外処分されることになっている。
現在、この中間貯蔵施設は原発のあった大熊町と双葉町に建設が予定されているが、「中間」のまま、移転先がなく「永久貯蔵施設」になってしまうことに懸念が示されている。また、この中間貯蔵施設に受け入れについても多額の交付金が動いており、地方に押し付ける構造は変わっていない。