内田康夫『津和野殺人事件』(光文社文庫 1988)を読む。
1984年に刊行された本で、国鉄という響きが懐かしい「昭和」を感じる作品であった。
ただ観光地の地名だけを借りたインチキな旅情ミステリーとは違い、山深い島根県津和野の文化や因習をモチーフとした連続殺人事件物である、津和野と東京の対比が、田舎体質と都会の空気、引いては戦前と戦後の社会のあり方の隔絶を象徴しており、一流の文学作品と評してもいい内容であった。
ご存知名探偵浅見光彦の推理と寸分違わずに物語が進行していくが、物語のスケールが大きいために、かえって強引なスピード感が小気味良かった。
『津和野殺人事件』
コメントを残す