班目俊一郎『弁理士になるには』(ぺりかん社 1993)を卒読した。
市民生活には馴染みの薄い弁理士の仕事や資格について分かりやすく説明されている。
一口に、弁理士とは、国家試験に合格した資格者で、依頼者に代わって工業所有権(特許・実用新案・意匠・商標)の獲得、保全を業務とする人々である。サービスマークやデザインなどの登録商標は分かりやすいが、大半は電子・電気、機械、化学といった高度に専門化された工業系の特許出願を担当している。1本のボールペンにもいくつもの工業所有権が絡み合っている。ただアイデアを発明し、それを製品化すればよいという発想だけでは、生き馬の目を抜く現代では通用しない。全ての過程において権利として確立させることが求められるのだ。
一つ製品を開発すれば、その製品に該当する全ての特許や意匠を調査し、また他社の製品が売り出されれば、自社の持つ独自技術が使用されていないか確認する作業が必要なのである。
現代社会の釈然としない内容であったが、形のないアイデアそのものが権利化されて売り買いされるという「形而上学的な逆説」(岩井克人)を感じた。