月別アーカイブ: 2013年10月

『カーニヴァル化する社会』

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鈴木謙介『カーニヴァル化する社会』(講談社現代新書 2005)を読む。
TBSラジオの「文化系トークラジオLife」のメインパーソナリティを務める「チャーリー」の著書である。
液状化する労働観、情報化社会における監視、自分中毒としての携帯電話という3つの側面から、カーニヴァル(社会共同体の祝祭とは異なり、共同体から逸脱してしまった若者が瞬間的に盛り上がりを共有することで、孤立感を忘れ集団への帰属感が高揚する機会)の原理を解き明かそうとする。
「ニート」を中心とした若者の労働を巡る社会状況や、監視カメラではなく、データの蓄積という目に見えにくい監視システムのありよう、そして、ひたすら内面化していくコミュニケーションの分析から、分断化された個人と、それゆえにある些細な共通項で爆発的に盛り上がる(ブログ炎上や国際スポーツでの狂騒など)原因について社会学的に分析が加えられる。後半は社会学のタームを用いながら構造を明らかにするという高度な内容で、最後は理解が追いつかなかったが、ケータイやワールドカップといった分かりやすい具体例で、すいすいと内容に入り込むことができた。
著者のまとめの言葉が印象的であった。現在私たちが生活する社会と個人の関係を解き明かす社会学という学問について触れながら、彼のラジオでの口癖となっている「である以上」という語を交えつつ次のように語る。

「いかにあるべきか」の前に、「いかにしてあるのか」を徹底して問う、というのが、社会学という学問のあり方だとするならば、現在の私たちは誰も「いかにあるべきか」を語りうるほどに、現在についての知識を蓄積していると私は考えていない。である以上、もうしばらくは「いかにしてあるのか」について問い続ける必要があるといえよう。社会的な危機が様々な方面から指摘され、「べき論」の溢れる現在だからこそ、そうしたモラトリアムこそが必要とされているのではないか。

幼稚園の運動会

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本日は、長男の幼稚園の運動会に参加した。
朝から日差しが強く、じめじめと湿気もあり、炎天下の真夏の運動会であった。10月というのに半袖半ズボンで汗がだらだらであった。
昨年は1年早く入園した「年少少」だったので、クラスで一番小さく馴染めるかどうか心配もしたが、今年の「年少」クラスでは後ろから3番目ぐらいの大きさで、頼もしく見えてしまうほどであった。最後の方は、写真を撮っていた私の姿を見失ったようで泣き出してしまうこともあったが、クラスの男の子の友達と追いかけっこや戦いごっこに興じる様子に驚きと安心感を感じた。
心身ともに「充実」しすぎるほどの、夏?の一日であった。

夕方帰ってきてニュースを見たところ、都心で31.3度を記録し、観測史上最も遅い真夏日であったそうだ。
9月下旬頃は夏の終わりを感じたが、また10月に入って夏の盛りを感じるとは。

『トランスポーター3 アンリミテッド』

地上波で放映された、ジェイソン・ステイサム主演『トランスポーター3 アンリミテッド(仏題: Le Transporteur 3, 英題: Transporter 3)』(2008 仏)を観た。
ハリウッド映画でいうならば、1.5級のアクション映画という感じで、結論は見えているのだが、最後までわくわくと楽しめることができた。アクションシーンでは、CGは多様せずに、細切れのカットを繋げて上手く流れが作られており、今作の脚本にも参加しているリュック・ベッソン監督『タクシー』と絵作りがそっくりであった。

大学案内研究:昭和音楽大学

昭和音楽大学のパンフレット(2014年度版)を読む。
1930年に「総合的なオペラ教育」を理念に掲げ創立された下八川圭祐声楽研究所が母体となっている。1940年に東京声専音楽学校へと発展し、戦後大久保に校舎を移している。1969年に神奈川県厚木市に昭和音楽短期大学が開学し、1984年に4年制大学が開設されている。1998年に大学院が開設され、2007年には大学・短大・大学院全てが神奈川県川崎市の新百合ヶ丘駅周辺に移転している。
創立者の下八川氏がオペラで活躍した人物であり、オペラやミュージカル、バレエなどの舞台芸術に力を入れている。現在は作曲学科、器楽学科、声楽学科、音楽芸術運営学科の4学科で構成されており、それぞれに専門のコースが設置されている。また国内では珍しいオペラ研究所とバレエ研究所が設置かれ、音大なのにバレエダンサー養成コースや、アートマネージメント、舞台スタッフコースがなどが置かれている。

短大も同じようなコースが設置されているのだが、2013年度よりシニア層を対象とした音楽と社会コースが新設されている。短大の方は、2年間のカリキュラムを3年間または4年間で学ぶ長期履修学生制度が設けられており、総額2年分の学費で時間的にも経済的にもゆとりを持って学ぶことができるよう配慮されている。

大学のある川崎市とのコラボもあり、年間50回近いコンサートが開催されている。特に力の入っているオペラはS席4,500円もする本格的なものである。大学内にチケットセンターまで設けられている。教職課程などもあり一応大学という形をとっているのだが、舞台公演を支えていく養成所といった側面も有している。吹奏楽や管弦楽演奏会に加え、ジャズフェスティバルやミュージカルも開催しており、学生と施設の資源を有機的に活用した音楽事務所と称してもいいかもしれない。

500人近い顔が並んだ教員案内も添付されていた。前から疑問に思っていたのだが、なぜ音楽の世界では「師事」という語を使いたがるのであろうか。「師に事(つか)える」という意味なので、有名な演奏者からワンツーマンで指導されるという姿が見えやすい言葉である。音楽の世界は言葉での紹介が難しいため、華々しい経歴を披露することで、その人の技量を

大学案内研究:白百合女子大学

白百合女子大学のパンフレット(2014年度版)を読む。
沿革を読むと、今から300年以上前の1696年シャルトル聖パウロ修道女会の活動から始まっている。1878年にフランス人修道女が函館に来日し修道院を創設し、1881年に東京神田に学校を新設、関東大震災後の1927年に九段に新校舎が建設され、1935年より現在の白百合学園中学・高等学校の前身にあたる白百合高等女学校と校名が改められている。1946年に白百合女子専門学校国文科が設立され、1950年に英文科と国文科からなる白百合短期大学となっている。1965年に現在地の調布に移転し4年制大学が開学されている。現在では国語国文科、フランス語フランス文学科、英語英文科、児童文学・文化専攻と発達心理学専攻からなる児童文学科の1学部4学科で構成されている。1学科定員100名、全学科で一学年400名の規模の小さい大学である。国文、仏文、英文の3学科は教員養成を前提としているようなカリキュラムとなっとおり、選考はあるもののどの学科に行っても、幼稚園教諭と小学校教諭の資格が取得可能となっている。

パンフレットは「お嬢様大学」と評されていることを意識しているのか、結婚式場のパンフレットかと思うような、緑に囲まれた教会のイメージで統一されている。偏差値的には日東駒専とちょうど同じレベルである。特に児童文学科児童文学・文化専攻が一番の看板学科となっており、幼稚園教諭・小学校教諭・司書資格が取得可能な上に、他大学にはない絵本やアニメを体系だって学ぶカリキュラムが整備されている。他学科と異なり修士課程も博士課程も定員を越えており人気ぶりが伺われる。

得てして進学実績の高い高校が郊外に作る大学は失敗が多いのだが、白百合女子大学はブランドに支えられ、大学のレベルを保っている。2013年度は定員400名のうち指定校推薦の合格者が179名となっている。全国各地に「白百合」と名のつく高校が7校あり、十分に指定校で数を稼ぐことができ、残りの220名枠を一般入試とAO入試に回すことになるため、2倍以上の倍率で受験者を選考することができる。

女子大全体が不人気で、資格取得の専門学校に近い形を進むのか、共学に変わるのかどちらかに舵を切らざるを得ない現在、「お嬢様」のブランドを全面に出す戦略は一定評価を得ているのであろう。都心からはいささか離れてはいるが、森の中のおしゃれな文学部というイメージが崩れてしまっては、京王線沿いの大学激戦区の中で他大との差別化を計るのは難しいであろう。