絲山秋子『ばかもの』(新潮文庫 2008)を読む。
久しぶりに小説を手に取ったためか、貪るように読み終えた。
雑誌「新潮」平成20年1月号〜8月号に連載された小説である。冒頭は官能小説のようなシーンから始まる。群馬県内の名もない大学を卒業し、やがて「行き場」を失ってしまい、アルコール依存症に陥ってしまう青年の心模様が克明に描かれる。酩酊しながら町を彷徨い歩く青年を通して、「行き場」のない自分探しという泥沼にハマってしまうロスジェネ世代の鬱屈した感情が伝わってくる。後半は、太宰治の『人間失格』のような疲れ果てた恋愛ストーリーへと変わっていく。
短い小説であるが、絲山さんの本領が発揮されたような内容で面白かった。
『ばかもの』
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