恵泉女学園大学のパンフレットを読む。
都心にあるのかと思っていたが、多摩センターの駅からスクールバスで8分と、遠方からの学生にとっては少々不便な場所にある。
1929年にキリスト教徒の河合道が創設した恵泉女学園普通部を起源とし、戦後、恵泉女子農芸専門学校が短大、そして4大へと発展していった、一風変わった大学である。現在では、日本語日本文化学科と英語コミュニケーション学科、文化学科を擁する人文学部と、国際社会学科と人間環境学科がある人間社会学部が置かれている。
今でもその名残なのか、1年次の共通科目に「生活園芸」という農業体験科目が置かれている。短大時代は全寮制を敷いていたようで、修道院的な教育環境がベースになっているのであろう。週4日、1時限と2時限の間に25分間の礼拝の時間が設けられている。
また、共通科目に「平和研究入門」や「ヒロシマ・ナガサキ学」といった授業が開設され、大学院には「平和学研究科」なる修士課程が設置されている。この平和学研究科では、「戦争・武力紛争や軍事体制の強化と言った直接的暴力、経済格差、差別・人権侵害、環境破壊と言った構造的暴力など」を生み出す「植民地主義のような歴史的背景、宗教的・文化的不寛容などの社会構造」を変えていく人材を育成するという。大変興味深い研究科である。
創設者の河合道は日本YWCAの創始者であり、キリスト教的な平和主義・人間主義・環境保全が、大学のカリキュラムの底流にしっかり流れている。先ほど読んだ鎌倉女子大とは対照的な大学である。
日別アーカイブ: 2009年10月12日
パンフレット研究:鎌倉女子大学
鎌倉女子大学のパンフレットを読む。
1943年に京浜女子家政理学専門学校を母体に、1959年4年制大学として発足し、1989年に現校名に変更された程々の歴史のある学校である。大船駅から徒歩8分の至便な場所にあり、現在では家政学部と児童学部、教育学部、短期大学部を置く。短期大学部には、幼稚園教諭2種、小学校2種の3種類の資格が取得できる初等教育学科が置かれている。家政、栄養、幼児教育、初等教育に絞った学部構成は、女子大として成功であろう。
また、学部構成といい、落ち着いた環境や少人数教育といい、典型的な郊外型女子大学である。幼稚園から大学まで経営しており、財政的に余裕のある法人に特徴的な大学である。入試倍率を見るに、管理栄養学科以外は厳しい状況である。
パンフレット研究:千葉商科大学
千葉商科大学のパンフレットを読む。
慶応大学SFCを設立し初代総合政策学部長を務めた、加藤寛前学長のイメージが強かったので、十数年前にできた新設大学かと思っていた。しかし、パンフレットを読んで初めて、1928年設立の巣鴨高等商業学校が前身となっている80年近い伝統のある学校だと分かった。元が商業学校なので、商学科と経済学科、経営学科を有する商経学部が中心の大学である。特に簿記には力を入れ、08年度には日商簿記1級に7名、公認会計士に1名が合格している。
千葉県市川市にあり、埼玉からは遠い学校のイメージがあるが、武蔵野線を使えば越谷駅から45分と意外に近いことが分かった。
また、少子化の影響であろう、2000年に慶応の総合政策学部と環境情報学部が合体したような政策情報学部が設置され、09年には完全に就職予備校と化したサービス創造学部なるものまで生まれている。
政策情報学部は学部としての理念がよく分からない。行動し続けることで社会の第一線で活躍する能力が身につくと喧伝されている。しかし、先行の慶応SFCがずっこけつつある現在、その二の舞になることは免れないであろう。
さらに、09年に始まったサービス創造学部は、他大学でいうホスピタリティやサービス経営にあたるのであろう。1年次より業界セミナーやインターンシップを通じてビジネスマインドを培うという奇妙な学部である。
要するに、商経学部以外は眉唾物であろう。