大森みゆき『私は障害者向けのデリヘル嬢』(ブックマン社 2005)を読む。
タイトル通り、とある地方都市で、「障害」者専用のデリヘルを経験した著者が、仕事の思い出や店や社会に対する疑問を述べる。論としてまとまってはいないが、「障害」者の性欲という、健常者にとって二重に関わりにくいテーマに、現場の一女性の立場で向き合っており、大変興味深い内容だった。
「これが一番のリハビリになるんだよね」というように、回を重ねるごとに、少しずつだが身体が動くようになってきたのだ。最初の頃、ほとんど動かなかった右手が私の胸を触るために動くようになってきたし、服の着脱のときも、お尻を浮かせたり、寝返りを打たせるときに、今までは私の力だけだったのが、本人の意志と力も加わって、横に向けるのが少し楽になったり。
食欲、睡眠欲と同じように性欲は、人間の三大欲求のひとつなのだとあらためて実感した。性欲が刺激され、解消されれば、何かが変わっていくのかもしれない。障害者の人たちに、障害がコンプレックスであると思わせない世の中、そういった環境は、どうすれば作れるのだろう? 今、国でやっている福祉的事業だけでは、特に恋愛や性の問題というのは、永遠に置き去りにされてしまう気がするのは、私だけだろうか。