井上孝夫『世界中の言語を楽しく学ぶ』(新潮新書 2004)を読む。
直接外国語と接点のない校閲の仕事をするサラリーマンである著者が、通勤の途中などをのこま切れの時間を利用して数十の外国語を学ぶコツを伝える。自分が築き上げてきた勉強法や生活習慣を読者に丁寧に伝えようとする自費出版的な作品である。
私たちは「外国語=英語」という前提でものを考えてしまいがちである。しかし、改めて世界にはこれほどの言語が存在したのかと、著者の手のつけた外国語の数に驚かされる。ゲール語やアムハラ語、きわめてマイナーなフェロー語、そして絶滅したタスマン語やダルマチア語など著者の関心は古今東西に及ぶ。
その中で、著者は英語の媒介語としての有用性を評価しつつも、次のようにも述べる。私自身が一昨日までオーストラリアにおり、オーストラリア人の英語に対する寛容な態度(発音や文法が多少違っていても理解しようとする姿勢)に関心していたので特に興味を引いた。
現在の事実上の国際語となりつつある英語。日々悩まされている読者諸氏は、「なんでこんなややこしいものを覚えなくちゃならないんだ?」と嘆きたくもなるでしょう。英語の、スペルと発音の乖離はひどい。こんなに離れているのはデンマーク語やゲール語以上です。国際語としては全く非効率的である。しかし私たちは英語を学ばなくてはならない。これは現実です。では今のような悩みを非英語話者は永遠に味わうのでしょうか。
そうでもないだろう、と私は思います。恐らくは徐々に英語のエスペラント化が進むのではないか。不規則形、不規則なスペルを無くし、覚えやすく使い易いものにする。Englishは英米の方言を指し、国際共通語としてInterlish(Internalional Englishを略した造語)とでも呼ぶ日が来るかもしれない。
自国語を国際語に供した結末には、興味があります。