吉村正和『フリーメイソン:西欧神秘主義の変容』(講談社現代新書 1989)を読む。
18世紀から19世紀のヨーロッパとアメリカにおけるフリーメイソンの創立と発展を中心に論じたフリーメイソン入門書となっている。当時のフリーメイソンの思想や加入の儀礼の説明は、ソロモン神殿やら死者の復活やら隠された象徴などの単語が出てきて、ファイナルファンタジーのゲーム攻略本か何かを読んでいるような気分になった。
フリーメイソンの普及は世界史にべったりと張り付いており、イギリス名誉革命を擁護したジョン・ロックに始まり、アメリカ独立宣言を起草したベンジャミン・フランクリンもフリーメイソンの一員であり、フランス革命の指導的原理である「自由・平等・博愛」もフリーメイソンに由来するとされている。著者も指摘している通り、フリーメイソンの思想は、特定の宗教団体ではなく、神を中心とする価値観を人間中心の価値観に「世俗化」させた西欧近代文化そのものである。系統だった組織もないという点で、東洋における道徳の規範となっている「儒教」と同種のものと捉えておいてよいだろう。